金融機関が日銀の口座に預けている資金の合計額(日銀当座預金残高)が6月26日に過去最高の43.5兆円を記録した。国庫の季節要因(年金支払いや国債償還など)も増加に影響しているが、基本的には日銀の金融市場に対する巨額の資金供給が累積したことが残高の押し上げにつながっている。

 金融機関が日銀当座預金に預けなければならない法定準備預金は7.5兆円程度なので、金融機関は凄まじい額の余剰資金を日銀に預けていることになる。しかし、そのお金は単に日銀の口座に眠っているだけである。

 似た現象は、米国、英国、欧州でも起きている。現代の銀行はさまざまなリスク管理の規制に縛られている。中央銀行に預けている準備預金が増大しても、銀行が企業や個人への貸し出しを増やせるわけではない。経済学の教科書によく出ていた「準備預金が増えたら銀行は貸し出しを伸ばし、マネーサプライが増加する」という説明は現代にはそぐわない。外為市場では「日銀当座預金が増えると円安になる」といわれるが、実際はマネーは流れていない。

 日銀当座預金に影響を与える国庫や日銀券の動きが仮に昨年並みに推移すれば、日銀の資金供給は今後も増えていくため、日銀当座預金は来年6月末には50兆~60兆円へ達する可能性がある。ただし、その試算は、金融機関が日銀の資金供給を拒まないケース、つまりオペに「札割れ」が発生しないケースが前提だ。実際には多くの銀行は手元流動性をそんなに高めなくてもよいため札割れが多発、結果的に日銀当座預金はさほど増えないかもしれない。