百貨店の化粧品売り場は、これまで「不景気に強い」といわれてきた。「美容に強い関心を持っている女性層は、他の支出を削ってでも高級化粧品におカネを使う」(大手化粧品メーカー)というのが“定説”だったからだ。

 ところが、風向きが変わってきた。2008年12月の全国百貨店の化粧品売上高が前年同月比1.7%減になったのだ。じつに23ヵ月ぶりの前年割れである。

 大手化粧品メーカーの幹部は「クリスマス用ギフトの苦戦が原因。百貨店の化粧品そのものが苦戦しているわけではない」と否定するが、業界関係者のあいだでは「あのシャネルでさえも百貨店向けは前年割れに陥ったようだ」と衝撃が走っている。

 百貨店の化粧品のなかには売れ行き好調の商品もある。たとえば、マックスファクター(P&G)が展開する「SK2」。化粧水一本が1万5000円もする高級化粧品ブランドだが、「昨年も前年をクリアした」(幹部)。

 さらに、1セット3万円のマスクなど高級路線の「LXPライン」に至っては「08年は前年比40%増」(幹部)という。

 アンチエイジング(抗加齢)を前面に出しながら、購買層が20~60代と幅広いのが強みだ。

 だが、百貨店への逆風は確実に強まっている。化粧品メーカーは「百貨店から新製品を出してくれと催促されるが、ボリュームゾーンの中価格帯に注力したい」(大手化粧品メーカー幹部)と、新製品投入も息切れ気味だ。

 さらに消費者も変化している。「安い化粧品でもお手入れ次第で肌がきれいになる、などの口コミによって、高級化粧品の試し買いが減ることもありうる。美容に敏感な消費者のブランドロイヤルティは必ずしも高くない」とある化粧品メーカー幹部は指摘する。

 高級化粧品は景気に左右されにくいという神話が過去のものになるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  大坪稚子)