昨年末にとうとう一時60円の株価を付けた日本航空(JAL)。きっかけは、企業再生支援機構が会社更生法適用の申請と、支援機構による支援を抱き合わせる案を提示したことだった。その後、政府が2000億円の融資枠を設定したことで、株価は80円台にまで持ち直しているが、市場には一触即発の不安感が漂っている。

 最大の問題は、支持率低下を防ぎ、今年7月の参議院選挙で勝ちたいという思いから、政府が迷走し、きちんと舵取りをしていない点にある。

 「このままJALに税金をつぎ込むなんて、国民の理解が得られない」。民主党内にはこうした意見が広がっており、支援機構を所管する菅直人副総理・前国家戦略担当相(現財務相)はことさら、法的整理に積極的といわれている。

 支援開始から3年後にはJALから手を引かなければならない支援機構も、法的整理で可能な限り負の遺産を断ち切らなければそのときに損失を被るかもしれないという恐怖感がある。

 一方で、安易に法的整理に踏み切れば、運航に大混乱が起こるうえ、客離れに拍車がかかるとして反対しているのが、メガバンクや国土交通省だ。

 「議論は平行線のまま。まともじゃないですよ」。昨年秋のJAL再生タスクフォースと同様、議論を煮詰めもせずに方針を固めようとする支援機構に対して、メガバンク関係者は怒りを隠さない。

 法的整理を選択した場合に考えなければならないオペレーションの維持や取引先との折衝などは「いまだにほとんど白紙」(JAL関係者)。2~3ヵ月の準備期間が必要といわれる各方面での事前調整だが、ようやく1月5日、「想定しうる事態」を検討する作業に取りかかったばかりだ。

 どちらの道を選択するにしても、JALが確実に再生するロードマップを描かなければならないはずだが、ここの議論も十分ではないまま、法的整理か私的整理かという決断部分だけがクローズアップされている。

 冒頭述べたように、すでに株価は乱高下しており、「顧客離れも拍車がかかっている」(JAL関係者)。取引先のJALを見る目も厳しさを増しており、政府が設定した2000億円の融資枠で稼げる時間は、ほんの1ヵ月程度だ。

 米・デルタ航空や全日空との提携も報じられているが、「具体的な方向性が定まらない以上、決められるわけがない」(関係者)。それどころではないほど、資金面で追い詰められている。

 今後1~2週間程度で、支援機構の方針が決定されるスケジュールとなっているが、積み上げられたまま放置されているさまざまな問題にどう決着をつけていくのか。

 政府の無策が露呈するなか、タイムリミットだけが刻々と迫っている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

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