ピーター・ナバロ氏Photo:Win McNamee/gettyimages

 ホワイトハウス関係者らの話では、ドナルド・トランプ米大統領が新たな対中関税の導入を決めた際、ピーター・ナバロ補佐官(通商担当)以外のアドバイザーの進言をすべて却下した 。それ以来、世界経済と米国経済は悪化に向かっている。われわれは、この状況を、トランプ・ナバロ通商政策による景気減速と呼ぶべきかもしれない。

 トランプ氏はこれまで、株価が自身の経済運営の指針であるかのように語っていた。これは決して賢明な判断ではない。株価は多様な要因によって変動するからだ。しかし7日には、株式市場の調整を過度に気にすべきではないと公言した。ダウ工業株30種平均は7日朝に急落した後に安定を取り戻したが、同日終値はトランプ氏が関税攻勢を開始した2018年1月時点の水準を依然下回っていた。トランプ氏が株価を無視するのは自由だ。しかし、金融市場全体の動きは、貿易と通貨をめぐる緊張の高まりと世界経済減速への懸念を示している。

 株価は6日に回復したが、7日には世界経済の成長鈍化の懸念から再び下落した。ドイツでは鉱工業生産指数が大幅に低下し、欧州のリセッション(景気後退)入りの可能性が高まった。銅、鉄鉱石、原油、農産物など商品相場は下落基調にある。これはドル高も一因だが、世界経済の減速に伴う需要減退への懸念が影響している。

 米国経済は他の国・地域に比べ、うまく持ちこたえてきた。それは主にトランプ氏の政策のおかげだ。米経済の長きにわたる拡大期は既に勢いを失いかけ、2015年から16年に辛うじてリセッションを回避した状況だったが、規制緩和と税制改革によって勢いを盛り返した。景況感は急回復し、設備投資は急増した。それはさらなる雇用市場の伸び、賃金上昇と耐久消費財への支出を促した。