原油相場が協調減産やホルムズ海峡危機を尻目に「膠着」する不思議産油国の減産、米国のイランへの経済制裁、ホルムズ海峡での緊張など、原油価格を押し上げる要因には事欠かない。にもかかわらず、なぜ原油相場は膠着を続けるのか(写真はイメージです) Photo:123RF

煮詰まった状況が続く原油相場
背景にはどんな事情があるのか

 原油相場の動きが鈍い。

 原油価格を相場という観点から見ると、現在は持合の形成に入っており、トレンドが現れにくい、煮詰まった状況が続いているように映る。

 むろん、これまでの期間、トレンドをつくり出すようなイベントが何らなかったわけではない。しかし、市場参加者の相場見通しは、総じて当面こう着状態が予想されている特異な状況でもある。これらの背景について、供給側、需要側、時間軸の観点から重要と思われるポイント整理し、今後の原油市場の行方について改めて考えてみたい。

 供給側の動きについて、まず触れておかなければならないのは、産油国による原油価格押し上げへの継続的な試みだ。7月1日・2日に開催されたOPEC総会、及び非OPEC産油国を含んだOPEC+(オペックプラス)会合で減産の継続が確認された。

 これは2016年12月に当時の生産量をベースに日量120万バレルの原油生産を減産するとの合意で、現在でもこの合意に基づいて関係産油国は行動している。当時はOPECで日量60万バレル、非OPECで日量60万バレルの減産が割り当てられていたが、現在ではそれぞれ80万、40万と設定されている。

 14年にサウジアラビアがOPECにおける生産調整の役割から降り、かねてよりの景気減速も相俟って、ブレント原油価格は16年2月にバレル当たり30ドルを割り込み、終値ベースで27ドル88セントまで暴落している。

 この価格帯は、リーマンショック後以来の低水準だった。その後は世界的な景気回復の動きに合わせ、原油相場は自律反転し、50ドル台を回復した。当時の減産はもう一段の価格押し上げを企図したものだったが、在庫減少までの時間を要したことでその効果には疑問符は付いたものの、原油在庫が明確に減少するにつれて価格押し上げ策が奏功することとなり、昨年10月には86ドル台の高値を付けるまでに至った。

 しかし、その価格帯をピークに原油価格は再び調整モードに入り、昨年末までに50ドル近辺まで急落した(グラフ1参照)。価格水準の引き上げが実現したことで協調減産は緩和に向うのではないかとの推測が強まったことが価格調整の背景とされるが、減産は継続されている。今後も事態急変がなければ、20年3月まで生産調整は続く。