インスタグラムが、「いいね!」を非表示に――。
2019年7月18日、日本を含む7か国で、SNSを特徴づける機能のひとつである「いいね!」を非表示にするテストが始まった。背景には、「いいね!」がユーザーの精神に及ぼすプレッシャーがあるという。SNSの代表格であるインスタグラムがそこまでするほどに、SNSにのめり込む傾向は危機的状況にあるようだ。
現在、薬物やアルコールなどの物質への依存だけではなく、こうした「いいね!」依存のような「行動」への依存も広がっている。この「新時代の依存症」を、心の仕組みと、私たちをのめり込ませる「依存症ビジネス」の仕掛けの両面から読み解き、さらにはその対処法まで示して世界中が絶賛した『僕らはそれに抵抗できない』。同書から、インスタグラムで「いいね!」依存に陥ったある女性の痛々しい告白、そして「いいね!」に人がのめりこむ仕組みをご紹介しよう。

インスタで「いいね!」中毒に陥った10代モデルの告白

インスタで「いいね!」中毒に陥った10代モデルの告白

 あるインスタグラマーは、自分が投稿した美しい写真の裏側をみずから暴露して話題になった。オーストラリアで活動するエセナ・オニールというモデルの女性は、インスタグラムに50万人のフォロワーがいたのだが、あるときアカウントネームを「Social Media Is Not Real Life(ソーシャルメディアはリアルじゃない)」に変更して、それまでに投稿した写真数千枚を削除した。残した写真はキャプションを書き換えている。たとえば、彼女がビキニ姿でビーチにいる写真には――

これはリアルじゃない。ウエストがキレイに写るように100枚は撮り直した。この日は何も食べなかったと思うし、自慢できる写真になるまで妹を怒鳴りつけて撮りつづけさせた。パーフェクトにする目標ありきで、そうじゃなきゃ意味がなかった。

 パーティドレスで湖畔に立つ自分を写した1枚では、キャプションをこう書き換えている。

これはリアルじゃない。ドレスは自分で買ったものじゃないし、インスタ映えするよう数えきれないくらい撮った。すごくむなしかった。

 さらに、ビキニを着た自分をいかにも自然体で写した別の写真でも、撮影時の真実を明かしている。

キャプションを事実に書き直します。この自然体は完璧に作り物。自然なところなんか何一つない。確かに早朝にジョギングして海でひと泳ぎするのは楽しかったけど、このときは、ふとももの隙間とヒップをキレイに見せることしか頭になかった。顔を横に向けてるのは、それが一番映えるから。どれだけセクシーでセレブっぽく見せられるか、そのことに必死だった。

 オニールの暴露には反発も集まった。かつての友人たちからは「100%売名行為」と言う声が上がったし、「でっちあげ」だと指摘する声もあった。だが、それ以外のネットユーザーの多くは彼女を称賛した。あるネットユーザーは、「彼女のキャプションをぜひ読んで――あの子は流されてない」と絶賛している。「すごいと思う。いいんじゃないかな」という書き込みもあった。

 オニールは、世界中の大勢のインスタグラマーが感じていたことを口にしたのだ。つねに完璧な1枚を撮らなければならないというプレッシャーがあること。そして、多くの人にとって、そのプレッシャーは耐えがたいものであること……。オニールは最近の投稿で、こう書いている。

「あたしは10代のほとんど全部を、ソーシャルメディアに依存して過ごしてた。SNSで認められること、ステイタスを得ること、それから自分の身体的魅力のことだけが大事だった。ソーシャルメディアっていうのは、加工画像と編集動画のランキングを他人と比べる場所だと思う。認められて、『いいね!』がついて、評価されて、見てもらって、フォロワーが増えて……っていうシステムで回ってる。ただ自分に酔ってるだけ」