「待つ」というネガティブを取り除く スシローグローバルホールディングス代表取締役社長 CEO 水留浩一Photo by Hiroki Kondo

回転ずしチェーン最大手のスシローは、自社開発の機器でオペレーションの自動化に取り組むなど、テクノロジーの活用に積極的だ。水留浩一社長に“寿司テック”を推進する狙いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)

キッチンにもレーンを引き
総労働時間を3割減へ

――今年6月にオープンした次世代型店舗「スシロー伊丹荒牧店」では、キッチン内のすしレーンを増強した「キッチン内オートウェイター」など新たな仕組みを導入しました。テクノロジーの活用に力を入れるのはなぜですか。

 機器開発には、利便性の向上と、労働力不足の解消という二つの視点で取り組んでいます。今回開発したキッチン内オートウェイターは、キッチンスタッフの無駄な動きを減らすことで、スタッフの削減効果があります。

 キッチンでは、ピークタイムで20人のスタッフが作業しています。その動きを分析すると、調理したものを少し歩いてレーンに乗せていた。その移動に無駄がありました。

 「ホールにレーンがあるならば、キッチンの中にもレーンがあればいいのでは」と考え、作ったものをキッチン内のレーンに乗せれば、そのままお客さまの元に運ばれる仕組みにしたというわけです。

 この機器の導入で、スタッフの総労働時間の2~3割の削減を目指します。伊丹荒牧店で想定通りの効果が出るようならば、既存店のリニューアル要素として加えていきます。1店舗当たりの投資額は増えても、総労働時間が減れば回収できます。

――今年5月には「Googleアシスタント」で来店予約ができるサービスを開始しました。業務の中でどこが最もテクノロジーに影響されていますか。

 オペレーション面では先に述べたような総労働時間の削減がありますが、もう一つ、導入してから5年弱がたつ弊社のスマートフォンアプリの影響が大きい。

 アプリの最大の効果は、お店で待たなくてはいけないストレスを軽減できるようになったことです。来店頻度を測定できることも、非常に効果を上げています。

 ずっと分かっていたことではあったのですが、お客さまがスシローに「来ない理由」は「混んでいる」から。だから、その解決策としてアプリ予約ができて、あと何分後に行けばいいと分かるようした。そうすれば、有意義に時間を使える。

 この“ネガティブ”を取り除く技術を身に付けることで、新たな発想が生まれ、そこに経営側が投資をしているのです。

 今、既存店の売り上げの昨対比は順調に上がっています。中身を見ると、新規客だけではなく、既存客の来店頻度が高まることが数字を押し上げています。スシロー全体の来店頻度の目標値は1カ月に1回なのですが、その平均値が1回から1回弱へ上がってきています。