「アイデアより結果を出せ!」ニュータイプに必要な「実装力」【石川善樹】

「新しい時代の生存戦略」をテーマとした『ニュータイプの時代』。その第2章で述べられている「ニュータイプの価値創造」について、2019年4月に刊行された『問い続ける力』(ちくま新書)著者の、予防医学者・石川善樹氏に話を聞いた。「問題発見」「課題設定」の能力が求められる中でも『問題解決』能力は依然として重要である理由、「アイデア出し」しかできない人の価値が下がっていく理由、さらには「未来予測」の是非まで、ニュータイプに求められる「実装力」について語ってもらった。(取材・構成/モメンタム・ホース 小池真幸)

問題解決できない人間は
話すら聞いてもらえない

『ニュータイプの時代』第2章「ニュータイプの価値創造」では、ニュータイプにとっては、問題解決能力よりも「問題発見」「課題設定」の能力が大切になると説かれています。

 僕も「問題発見」「課題設定」の重要性を感じるシーンは多いです。この山口さんの指摘は、非常にクリティカルだと思います。

 ただし、この本を読む際に一点だけ気をつけてほしい点があります。

「あ、問題解決能力はもう要らないんだ」と、誤読しないようにしてほしいんです。山口さんもおっしゃっていますが、『ニュータイプの時代」でも、問題解決能力は変わらず重要です。

 そもそも問題解決をできない人間が、いくら「問題発見」や「課題設定」をしても、誰にも話を聞いてもらえません。みなが抱えている難しい問題を解いてはじめて、新しい問いを提示する権利が与えられます。

 つまり、人さまに「実はこれが本当の問題なんだよ」と提案したいのであれば、まず「この人は問題解決をしたことがある」という信頼を醸成する必要があります。ある組織で新たな問題を発見しても、その組織の一番難しい問題を解いた人間でないと、話を聞いてもらえないことが多いのではないでしょうか。

 また『ニュータイプの時代』にも記載されていますが、「これからは、問題解決はAIがやってくれる」といった言説もよく耳にします。

 僕もこの認識には同意で、たとえばUberは、「タクシーを探す」という問題をAIで解決してくれています。AI研究者やAIを実装する人は、着実にAIが解ける問題を増やし続けていますし、その傾向は今後も続くでしょう。

 しかしAIには解けない問題も、まだまだたくさんある。たとえば「うちの会社の新規事業をどうすればいいのか」「フリーランスの人はどう生きていったらいいのか」といった問題に、AIはまだ答えを出せません。

「アイデア出し」の価値は
実は高くない

問い続ける力「問い続ける力」
筑摩書房
880円+税
石川 善樹 著

 問題解決には、「アイデア出し」と「実装(実行して結果を出す)」の2つのフェーズがあります。僕の感覚では、特に後者の重要性が増していくと思います。

 アイデア出しをできる人は、たくさんいます。同じ人間ですから、アイデアなんて、考えれば出るというのが僕の感覚です。一人で考えて出なくても、外部の力などを借りてみんなで考えれば出てきます。

 たとえば最近、とある地方の会社から「強大なるライバル企業にどう対抗すればいいか?」と相談を受けました。3ヵ月かけて解決アイデアを見出すプロジェクトだったのですが、僕は初回の会議で冒頭15分話を伺った時点で、「おそらく皆さんの中ではこういう思い込みがあって、それを崩すとこういう対抗策が考えられますが、いかがでしょうか!?」とアイデアを出したら「そんな手があったんですね! 目から鱗です!!」と終わってしまいました。