ゼロから解説、フェイスブック「リブラ」が世界通貨になるまでのいばらの道Photo:metamorworks/gettyimages

基軸通貨や国際的な決済システムは世界経済の基盤です。この基盤の制度設計に影響を与ることができるのは、世界経済に対する各国のパワーです。もし国家が独占しているこのパワーに、企業のような非国家のアクターが挑戦してきたとしたら、 国家は本能的に拒絶反応を抱くと考えられます。これまでであれば現実味がなかった「国家以外が発行する通貨」の構想が、今にわかに世界を騒がせています。米フェイスブックが6月18日に発表した、暗号通貨「リブラ」です。(経営共創基盤取締役マネージングディレクター 塩野 誠)

ユーザー24億人が使える
国際デジタル通貨ができたら?

 フェイスブックのユーザー数は約24億人(2019年6月時点、会社開示数値)に上ります。これは中国、EU(欧州連合)、米国、日本の人口を足し合わせたものと同規模です。「もしもこのユーザー全員が使う通貨ができたら?」という壮大なアイデアが、現実化に向けて動き始めました。

 暗号通貨「リブラ」の運営者はフェイスブックではなく、独立した非営利組織のリブラ協会です。リブラ協会が開示しているホワイトペーパーによると、リブラのミッションは「多くの人々に力を与える、シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラになる」ことです。リブラがビットコインのような仮想通貨と大きく異なるのは、裏付け資産として法定通貨(ドル、ユーロ、円など)や銀行預金、政府短期証券を保有していることです。これにより、価値変動を軽減した「安定的なデジタル暗号通貨」「ステーブルコイン」であるとしています。