実は日韓も積極的、米国のシンクタンクを支える「ドナー」の正体

国益を実現するために、さまざまな経済ツールが駆使される時代。この時代を率いるのは米国だ。冷戦後30年にわたり、自由貿易とグローバル経済をけん引してきた米国の変化に、戸惑いを感じる日本人も多いだろう。この大きな潮目にあって、存在が改めて注目されているのがシンクタンク。時の政権に知恵を授ける頭脳集団は、政策転換の潮目で特に需要が高まる。ではこのシンクタンクは、誰からお金をもらって活動しているのだろうか。全4回特集「国益と経済 経済安全保障の時代」の最終回では、米国のシンクタンクは誰が食わせているのか解き明かす。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

回転扉式に入れ替わる
政策担当者に知恵を授ける

 シンクタンクとは一般的には、さまざまな分野の政策の立案・提言を主業務とする研究機関を指す。日本を含む世界各国に存在し、短期から長期の調査・研究を行う。世論や政策当局者、メディアなどに意見を訴えるほか、政府側へ継続的に人材を供給するなどの活動を行っている。これが特に発達したのは米国だ。

 米ペンシルベニア大学が発表している「世界有力シンクタンク評価報告書」の2018年版によると、世界のシンクタンクは合計8248カ所。このうち23%に相当する1871カ所が米国にあり、国別では世界最多だ。なぜ米国がシンクタンク大国なのか。それは「需要がある」という一言に尽きる。

 ご存じの通り、米国の政権は保守とリベラルの間で振り子のように常に揺れている。政権が変わると、政治・行政の要職に任命される人々はがらりと変わり、政策も一新される。これが米国政治のリボルビングドア(回転扉)だ。目まぐるしく入れ替わる政策担当者は、必ずしも中長期的な視点で状況を分析して政策を構築できるわけではない。その彼らに代わって、知力を提供するのがシンクタンクである。

米国の保守系・リベラル系・超党派系の主要シンクタンク

保守系 (5)戦略国際問題研究所(CSIS)
(8)ヘリテージ財団
(15)ケイトー研究所
リベラル系 (1)ブルッキングス研究所
(11)ウッドロー・ウィルソン国際学術センター
(12)ピーターソン国際経済研究所(PIIE)
(13)アメリカ進歩センター
超党派系 (3)カーネギー国際平和財団(CEIP)
(9)ランド(RAND)
(17)外交問題評議会(CFR)
*カッコ内の数字は米ペンシルベニア大学「2018年世界有力シンクタンク評価報告書」の総合部門(Top Think TanksWorldwide [U.S. and non-U.S.])における順位で米国内の上位10組織を抜粋。各組織の主な思想軸の位置づけについては各種情報を基にダイヤモンド編集部作成(保守系・リベラル系の該当シンクタンクは中道に近いと指摘されるものも含む)

 こういった米国のシンクタンクは主に、独立した非営利の団体だ。活動の原資は基本的に、数多くの「ドナー(寄付者)」からの寄付である。米国では寄付金の透明性を重視し、金額のレンジごとに寄付者を詳細に明かしている機関が少なくない。本稿では個々の開示情報を基に、誰がどういったシンクタンクを支えているのかを見てみた。

 米シンクタンク首位(出所:2018年の「世界有力シンクタンク評価報告書」、以下順位の出所は同じ)のブルッキングス研究所は、資金規模(総資産)およそ600億円という巨大な頭脳集団だ。この規模という点で、また過去のさまざまな政策における影響力という点で、飛び抜けたブランド力を誇る名門である。