株や債券の期待収益率が低下するなか、再評価される日本企業とは今の時代は、実物資産の裏付けがある資産クラスが、安定した投資先として有望だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

過去10年と異なり今後5年間の
金融資産のリターンは低調へ

 過去10年、米国株式は目覚ましい上昇を続けてきた。仮に2009年3月にS&P500種株価指数に投資し、10年間保有し続けたとすると、年率15.9%(現地通貨ベース、配当込み)のリターンが得られる結果となる。同時期の東証株価指数(TOPIX)のリターンが同9.7%だったことを考えると、FANGに代表される米国企業の成長性が抜きん出ていたことがよくわかる。

 その一方、米国企業が生み出した利潤の多くが、経営者や株主に優先的に分配されてきた結果、深刻な経済格差と社会の分断を招いたという弊害もある。その反省からであろうか、米国の主要企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルは、8月19日、従業員や取引先、地域社会に対しても株主と同様の配慮をするとして「株主第一主義」の見直しを宣言した。

 筆者はこの声明を、米国が持続可能な社会へと軌道修正する貴重な一歩だと評価しているが、同時に米国企業のROE(自己資本利益率)が低下する予告であると受け止めている。さらに、トランプ政権が推進する保護主義的な通商政策や移民排斥の動きが企業の利益率を圧迫する要因となり得るため、今後の米国株式にかつてのような高いリターンを期待するのが難しくなるだろう。

 先行きに対し楽観的になれないのは、債券も同様である。これまで世界の主要中央銀行が実施してきたマイナス金利や量的緩和といった非伝統的な金融政策の結果、利回りがマイナスとなった世界の債券は、2019年6月に13兆ドルに達した。利回りがマイナスの債券を満期まで保有すれば元本割れになるため、債券の期待収益率も極めて低調なものに留まらざるを得ないだろう。