総合病院で2000人のリハビリに関わってきた理学療法士が、ストレッチよりはるかに簡単なのに、驚くほど効果のある奇跡の「うつぶせ」療法を紹介します。
たった1分の「うつぶせ」を習慣にするだけで、猫背、腰痛、肩こり、首の痛み、不眠、疲労、冷えといった体の不調が改善し、高齢者には誤嚥予防にもなります。
「うつぶせになるだけで、本当にそんなに効果があるの?」
と思うでしょうが、どうしてそんなに効果があるのか、その納得の理由を『うつぶせ1分で健康になる』から一部抜粋し、再構成して紹介します。

何年もひどい腰痛に悩まされていた僕を、痛みから解放してくれたのが「うつぶせ」でした!Photo: Adobe Stock

僕のうつぶせとの付き合い方

何年もひどい腰痛に悩まされていた僕を、痛みから解放してくれたのが「うつぶせ」でした!乾亮介(いぬい・りょうすけ)
理学療法士、ピラティスインストラクター
関西医療学園専門学校理学療法学科卒業。理学療法士資格を取得後、医療法人宝生会PL病院リハビリテーション科に勤務し、16年間でリハビリに関わった患者は2000人を超える。整形外科疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、心疾患などあらゆる患者のリハビリに携わる。同時に訪問リハビリや学会発表、論文執筆、講演や理学療法士養成校の非常勤講師など精力的に活動し、2012年には畿央大学大学院健康科学研究科にて修士号(健康科学)を取得。ピラティスインストラクター資格を取得後、2017年4月に独立して予防医学サロン&ピラティススタジオ「リハティスプラス」を開き、地域の予防事業や全国各地で研修会やセミナーの講師を務める。

 僕自身も寝る前の1分間、うつぶせになるのを習慣にしています。
 そして、うつぶせのまま、ごく簡単な応用エクササイズも行います。
 この応用エクササイズには、「重たい体が軽くなる」「姿勢をよくし、歩幅を広げる」「背筋を強化して、いい姿勢をラクに維持できる」といった効果のあるエクササイズがあります。これらの応用エクササイズの中から、その日の体調に合わせたものを行うと、ものの数分で体がリセットされていくのが実感できます。

 理学療法士という仕事柄、施術のために前かがみになることが多いので、腰痛になりやすく、体のメンテナンスは欠かせません。
 また執筆やプレゼンテーションの資料作りなどで長時間座ることも多いので、そういった作業をした後は、うつぶせをすると腰の疲れが取れ、ラクになるのを実感できますね。

 もちろん、歩いたり走ったりするのもいいのでしょうが、うつぶせは気軽に短時間でできるので、日常に取り入れやすいところが魅力です。
 また、うつぶせになると、足の先までじわじわと血流が行きわたる感じがして、すぐに寝入ることができるので、忙しいときほど「うつぶせをしなくては……」という気になります。

 とはいえ、僕が体のリセット法としてうつぶせを実践するようになったのは、理学療法士時代ではありません。
 ピラティスのインストラクターになるにあたって、ポーズや姿勢などを学び、自分で本格的に練習するようになったときに、うつぶせでのエクササイズがとても多いことや、その効果、重要性にあらためて気づかされたのです。
 よくよく考えてみると、病院勤務時代は理学療法士として患者さんにうつぶせの施術をたくさん行ってきましたが、自分自身では普段の生活の中で、それほどうつぶせになっていませんでした。
 うつぶせで行う腹臥位療法の重要性はわかっていたつもりでしたが、そこにピラティスのエッセンスが加わったことで、うつぶせが体のすべてのバランスを保つために欠かせないものであるということが実感としてわかってきました。
 同時に、腹臥位療法への理解もさらに深まり、僕がこれまでやってきたことのすべてがひとつに“つながった”感じがしたのです。

 思えば、理学療法士時代は常にひどい腰痛に悩まされていました。
 運動不足解消やストレス発散、そして趣味も兼ねて、僕は自宅から病院まで毎日ロードバイクでは片道10km、往復で20km、週に換算すると100km近く走っていました。
 それでも腰痛はなくならず、なかばあきらめていたようなところがあります。今考えれば、ロードバイクは前かがみの姿勢でペダルを回すので、股関節をまったく伸ばしていませんでした。