現在、財閥企業をはじめとする韓国の有力企業が、従来に増して海外進出を積極化しているようです。Photo:PIXTA

韓国の有力企業が
海外進出を積極化

 現在、財閥企業をはじめとする韓国の有力企業が、従来にも増して海外進出を積極化しているようだ。この動きの背景には、米中の貿易摩擦などの影響から世界的にサプライチェーンが混乱していることに加え、筋金入りの左派政治家である文在寅(ムン・ジェイン)大統領が労働組合寄りの経済政策を進めていることにもある。

 これまでの韓国経済の発展を振り返ると、保守派政権が財閥企業などを育成してきたことが重要な役割を果たしてきた。保守政権の下で財閥企業が迅速かつ大規模に設備投資を行い、輸出競争力を高め世界市場でのシェア獲得することを支えた。その環境があったからこそ、サムスン電子などは韓国国内に大規模な生産設備を設け、半導体やスマートフォンで世界のトップシェアを手に入れることができた。その意味では、財閥企業の成長が韓国経済の発展を支えた大切な要素だったことは間違いない。

 しかし、文大統領の政策はこれまでの保守派政権とは逆に、むしろ財閥企業の経営を締め付けている。文氏は世論の動向を見つつ、自らの支持獲得につながる主張を繰り広げてきた。そのひとつとして、同氏は、企業の収益状況を無視して大幅に最低賃金を引き上げ、有力企業に対し縛りを強化することで経営体力を奪ってしまった。

 その状況は、各企業にとってはかなり厳しいと言わざるを得ない。世界市場で戦う有力企業が、より自由な経営環境を求めて海外に生産拠点などを移すのは、当然の動きといえるだろう。文大統領は、経済成長にとって最も重要な企業の信頼を失ってしまったようにみえる。