銀行・証券断末魔その5(中)

「銀行・証券断末魔」特集(全5回)その5は、保険業界にスポットを当てて上・中・下編に分けてお届けする。今回のその5(中)は損害保険業界に照準を合わせた。巨大自然災害が毎年のように襲来し、損保の財務を苦しめる中で、収益の柱となる自動車保険においても構造転換の足音が聞こえ始めた。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

2018年の巨大自然災害に続く
台風15号の深い爪痕

 関東地方など1都6県で最大93万軒もの停電を引き起こすなど、各地に深い爪痕を残した台風15号。

 千葉県の一部ではいまだに停電が続いており、電力会社や自治体が復旧に向けた対応に追われている真っ最中だ。

 損害保険会社も同様に、風水害を受けた火災保険の契約者への対応に全力を挙げている中で、現場の社員たちは「今年もか」という思いが脳裏をよぎったことだろう。

 なぜなら、損保会社は2018年も巨大台風などの相次ぐ自然災害によって対応を迫られ、多額の保険金支払いを余儀なくされたからだ。

 昨年は9月に発生した台風21号が大阪府をはじめ、関西地方を中心に大きな被害をもたらし、支払保険金の総額が1兆円を超えたほか、中国・四国地方の豪雨など三つの自然災害が、歴代の支払保険金額で10位以内に入るというまさに異常事態だった。

 実は日本の損保会社は、17年にも苦い経験をしている。ハービー、マリア、イルマという三つの大型ハリケーンによって米国などで甚大な被害が発生し、再保険などを引き受けていたことで、多額の保険金支払いが発生したのだ。

 「20~30年に1度の出来事であり、予測の範囲内だ」。大手をはじめ多くの損保会社は当時そう言って、業績への影響はあくまで一過性だと必死にアナウンスしていたが、翌年には日本国内で台風や豪雨による大きな被害が発生してしまった。