【出口治明との質疑応答10】
今こそ、日本人は
ダーウィンに学ぶ時！

世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU（立命館アジア太平洋大学）学長。歴史への造詣が深いことから、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では世界史の講義を受け持った。
その出口学長が、3年をかけて書き上げた大著が、なんと大手書店のベストセラーとなり、話題となっている。BC1000年前後に生まれた世界最古の宗教家・ゾロアスター、BC624年頃に生まれた世界最古の哲学者・タレスから現代のレヴィ＝ストロースまで、哲学者・宗教家の肖像100点以上を用いて、世界史を背骨に、日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した本だ。なぜ、今、哲学だけではなく、宗教を同時に学ぶ必要があるのか？
脳研究者で東京大学教授の池谷裕二氏が絶賛、小説家の宮部みゆき氏が推薦、某有名書店員が激賞する『哲学と宗教全史』が、発売後たちまち第5刷が決まり、本日の「朝日新聞」にも大きく掲載された。
9月7日土曜14時、東京・八重洲ブックセンターに約80名が集結。満員御礼の出版記念講演会につづき行われた質疑応答が盛り上がった。今回からは普段、めったに明かされない出口学長と会場のみなさんとの「白熱の質疑応答」を特別にお届けしよう。

ダーウィンの「運」と「適応」

出口　では、次の方どうぞ。

――先ほどの「川の流れに流れていく人生」についてもう少し詳しくお聞きすることはできますか。

出口　大きい川の流れは人間が操作しようと思ってもどうしようもないですよね。
今日、この会場になんで遅刻しそうになったかといえば、シリア難民の本、『シリア――震える橋を渡って』（ウェンディ・パールマン著、安田菜津紀・佐藤慧訳、岩波書店）を読んでいたからです。
シリアで起きている戦争は、シリアに住んでいる人々にとってはどうしようもない。そういう大きな流れになってしまったのですから。
でも、その流れの中で、各々がどんな人生を歩むかは、人それぞれ。

これは『種の起原（上・下）』（八杉龍一訳、岩波文庫）著者のダーウィン（1809‐1882）の言葉が一番わかりやすいと思いますが、すべては「運」と「適応」なのです。

将来、何が起こるかは誰にもわからない。必ずしも賢者や強者が生き残るわけではない。
すべては運と適応だけ。これがダーウィンの進化論の神髄です。

運とは、適当なときに適当な場所にいることです。

適当なときに適当な場所にいることは、人間にはどうしようもない運命です。
でも、そこに居合わせたときに、どんな適応ができるか？

どんな意欲を持ち、どんな世界にしたいと思って動くかは、みなさん次第。それが適応です。

このように段階を分けて考えたら、川の流れに流されていく人生と自分がやりたいことをやる人生は矛盾しないと思います。

ダーウィン風に整理すれば、運までが川の流れで、適応はやりたいことをやることです。

――ありがとうございます。

（つづく）