2008年秋以降、市場は、ようやく始まった国際協調の先行きと、見えない実体経済への悪影響の度合いを測りながら、相変わらずの乱高下を続けていました。そんな中、11月に入って7-9月期の決算が出始める頃から、次第に実体経済への影響が表面化して行きます。人々の不安と変革への期待は、さらに政治の世界にも、大きな変化をもたらすことになったのです。

 2008年11月にもなると、金融危機がいよいよ実体経済に影響していることは、誰の目にも明らかになります。

 まず日本では、グローバルな優良企業の代表格であったトヨタ自動車、パナソニックといった大手企業が、次々と通期の会社予想を修正し、減益予想とリストラ策を発表します。

 トヨタ自動車は、営業利益予想を当初の1兆6000億円から6000億円程度(当時、前年度比7割減)へと減額修正し、減産に伴って工場の期間従業員の数を半減させることを明らかにしました。パナソニックもまた、営業利益が前年度比3割減の3400億円となる予想を発表し、不採算部門の整理を加速すると発表しました。

 実際の通期決算では、両社ともこの時の予想すら大きく下回る水準で着地しており、この時点で想定していた悪影響を上回る景気減速が、両社を直撃していたことが後に明らかになるのです。

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 このような景気の減速に伴い、雇用悪化が急速に進み、この影響をまともにうけた派遣社員を対象とした「年越し派遣村」が年末に設置されたことは記憶に新しいかと思います。

 また、金融危機の震源地であったアメリカでは、実体経済へのより大きな悪影響が、明確化し始めました。12月2日、アメリカの誇りともいえる自動車業界ビッグ3が、揃って経営危機に陥り、合計で最大340億ドルもの金融支援を要請する事態が発生します。

 個人消費の代表である住宅が急速に悪化した後、次に自動車に影響が直撃しつつあることが明らかになりました。しかも、金融機関だけでなく、事業会社までもが数百億ドル規模の支援を必要とする事実に、「経済危機」の本格的な到来が懸念されました。

 政府も対応を余儀なくされます。ビッグ3への金融支援は一度は白紙になったものの、雇用に多大な影響が出ることへの懸念も大きく、米政府は結局12月19日に、GMとクライスラーに対する174億ドルのつなぎ融資の実施を決定します。そして、本格的な対応は翌年へと持ち越されることになったのです。