スマートフォンで血圧測定写真はイメージです Photo:PIXTA

 高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会編)が提唱する75歳未満の高血圧の基準値は、診察時に測った血圧で140/90mmHg、家庭用の血圧計で測った場合は135/85mmHgだ。

 血圧は通常、夜になると下がり昼間の血圧に対して1、2割低くなる。しかし、何らかの原因で夜に血圧が下がらないタイプや、極端に下がってしまうタイプ、夜間から早朝にかけて上昇しっぱなしのタイプなど、さまざまなパターンがあることがわかってきた。

 通常の日内変動から逸脱した場合、脳梗塞や心肥大、認知症など、高血圧に関連する疾患を合併しやすいので早期の対応が必要だ。

 しかし、診察室で血圧を測るだけでは日内変動の狂いまで発見できないのが難点。家庭用の血圧計か、24時間血圧計(保険適用)を借りて、こまめに血圧を記録していくしかない。

 少々面倒に思っていたところ、スマートフォン(スマホ)で自撮り動画から血圧を測定する方法を開発したとの報告があった。

 カナダ・トロント大学の研究グループが公表したもので、スマホの光学センサーが顔の皮下を流れる血液中のヘモグロビンに反応し、血流の変化を捉え、変化量から血圧値と脈拍を計算する仕組み。

 カナダと中国で募集した被験者1328人に、専用のアプリを搭載したスマホで2分間の自撮りをしてもらい、計算値と従来の方法で測った血圧値とを比較した。

 その結果、上の血圧値との一致率は95%、下の血圧値は96%という高い精度で測定できることが示された。撮影時間を30秒に短縮しても精度は保てるようだ。

 研究者は「今後、家庭用の照明の下や皮膚の色など、撮影条件を変えて追試する必要がある」とし、あくまで従来の測定方法を補完する技術のひとつと強調している。

 最近はスマホ画面にタッチするだけで、指先の血流から血圧を推計するアプリも開発中で、こちらも精度は95%以上と高いそうだ。

 数年もすれば、降圧剤と一緒に血圧測定アプリが「処方」され、結果を主治医と共有する、なんてことが当たり前になりそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)