買い物の判断を慎重にできる
心理的アプローチ

ボーナスでの買い物イメージボーナスが入ったら大きな買い物をする――こう取り決めている家庭は多いが、このパターンこそが無駄な買い物をやめられない元凶かもしれない Photo:PIXTA

 消費税が引き上げになって、まもなく2週間がたとうとしている。今回は増税前の駆け込み消費もそれほど盛り上がらず、増税後の急激な落ち込みはないだろうと言われている。実際に消費に関する各種の指標を見てみないと何とも言えないが、肌感覚としては概ねそのような印象はある。

 加えて今回は、軽減税率やキャッシュレス決済における還元等の措置もあった。現場の一部では税率の違いやシステムの不具合によって混乱があるものの、キャッシュレスの利用は急速に拡大しているようで、コンビニチェーンによっては前年同期比で6割増、また交通系ICカードにおいては9月の会員加入者数が8月の14倍になるところもあるなど、利用者は大幅に増えているようである。今後着実にキャッシュレス決済が増えることは容易に予想できるだろう。

 筆者も従来から使っていたクレジットカードや交通系ICカードに加えて、スマホによるQRコード決済についても、いくつかのアプリをダウンロードして実際に使ってみた。確かにレシートを見て割引額や還元額が具体的な金額で印字されているのを見ると、何か得をしたような気分になることは間違いない。そういった心理的な効果によって消費に抵抗感がなくなることは事実だろう。

 しかしながら、日常の買い物でそれほど大きな金額を使うわけではないし、そうした買い物で何十円ずつ貯まったとしてもせいぜい月に数千円までのことだろう。それよりも人間の心理的な傾向を利用して、もう少し消費を慎重にする、あるいは無駄な買い物をしないための方法はないだろうか?

 買い物の鉄則は、「良いか、悪いか」で考えるのではなく「必要か、不要か」で考えるべきだということはよく言われる。これは確かにその通りで、「買おうかな」という意欲が出てきた時点で、「良い」と思っているのだから、「良いか、悪いか」で考えれば、“買った方が良い”に決まっている。冷静に考えるためには、その品物を買うことが必要かどうかで考えるべきなのだが、残念ながら、そこまで冷静に考えることができないのが普通の人間だ。

 そこで今回は、ある心理的な現象を使って、買い物の判断を慎重にすることができるという方法があるということを話したい。それはメンタル・アカウンティング(心の会計)である。本来、お金に関する収支の計算というものは、トータルで考えなければ意味がない。ところが人間は、心の中で勝手に会計勘定を作って、利用目的別にお金を仕訳してしまうという傾向を持っている。

 例えば、消費目的の勘定から支出するお金についてはあまり抵抗なく使ってしまうのだが、資産形成を目的とする勘定から消費のためにお金を出すということについては、大きな抵抗感を感じるのだ。