もしあなたが突然、社長に就任することになり、会社の経営を立て直さなければならなくなったとしたら、どうしますか? 『なるほど、そうか! 儲かる経営の方程式』(相馬裕晃著、ダイヤモンド社、8月22日発売)は、つぶれそうな会社をどうしたら立て直せるのかをテーマにしたストーリー仕立てのビジネス書です。主人公は、父親に代わって急きょ、経営トップに就くことになった27歳の新米社長・千葉早苗。本書のテーマは、MQ会計×TOC(制約理論)。MQ会計とは、科学的・戦略的・誰にでもわかる会計のしくみのこと。MQ会計をビジネスの現場で活用することにより、売上至上主義から脱して、付加価値重視の経営に舵を切ることができます。もう1つのTOCは、ベストセラー『ザ・ゴール』でおなじみの経営理論。経営にマイナスの影響をもたらす要因(ボトルネック)を集中的に改善することにより、企業の業績を劇的に改善させることができるというものです。本連載では、同書から抜粋して、MQ会計×TOCでいかに経営改善できるのかのポイントをお伝えしていきます。

経営とは「意思決定」の連続Photo: Adobe Stock

経営は意思決定の連続

 昼休みが終わり、いよいよマネジメントゲームの2期の開始だ。

 早苗はすぐ会社に戻って、「みせかけの利益」が出ているのかどうかを調べたくて仕方なかった。しかし、マネジメントゲームは丸2日間の研修。まだ始まったばかりだ。

 マネジメントゲームは、各参加者が順番にカードを引いて進んで行く。カードの種類は「意思決定」と「リスク」の2種類がある。

 意思決定を引いた場合、仕入、製造、販売など複数の選択肢の中から社長として会社の意思決定をする。

 セールスマンをたくさん採用して販売能力を高める会社もあれば、研究開発に力を入れて価格競争力を高める会社、大型機械を導入して生産能力を高める会社などなど、打つ手は無限大だ(下図表)。

経営とは「意思決定」の連続

マネジメントゲームでは、素早い意思決定が求められる

 リスクを引いた場合には、リスクカードを引き、その指示に従う。リスクにはラッキーとアンラッキーの2種類がある。何が出るかは引いてみるまで分からない。

 「それでは、始めてください!」
 川上の合図でゲームがスタートした。

 早苗の卓は、美樹からスタートだ。

 美樹は「研究開発」の意思決定をして、青いチップを会社盤に並べた。研究開発は、価格競争力が高まり入札販売の時に有利になる。

 早苗の番が回ってきた。最初の「意思決定」では、材料を2個仕入れて、資金繰り表へ記帳した。

 次の意思決定をどうしようか迷っているうちに、早苗の番が回ってきた。まだ何をするか決めていなかったため、隣の人を真似して「製品製造」をした。

 (みんな、意思決定のスピードが速くてついていくのが大変。でも売上を増やせば、利益が出るはず。経営者の一人として負けられない!)

 次の番が回ってきたとき、早苗は商品販売の意思決定をした。

 販売は入札制。最も安い競争価格をつけた参加者だけが売れるルールだ。研究開発をすると、価格競争力が高まり入札に有利になる。「プライスカード」と呼ばれる値札を提示し勝敗を決める。

 今回の入札には、早苗の他に美樹ともう一人の40歳くらいの男性が入札に参加した。

 「せーの! 32」「27!」「28!」

 最も低い競争価格27円を提示した美樹の勝利だ。

 (まぁ、初めはこんなものよね)

 早苗は、その後も入札に臨んでみるものの、なかなか勝てない。

 (全然売れない。なんとかしなきゃ……)

 お金が底をつきかけた終了間際に、リスクカードの「独占販売」を引いたところでタイムアップとなった。この売上のおかげで、なんとか期末経費を支払うことはできた。