今度こそ、勝利の女神は微笑むのか? 製薬業界が注目するのは、国内2位のアステラス製薬が、米製薬会社OSIファーマシューティカルズに仕掛けた敵対的TOB(株式公開買い付け)の成否だ。

 アステラスといえば昨年1月にも、米バイオベンチャーにTOBを提案しながら、ホワイトナイト(より有利な買収条件の提案者)の登場で断念した。今回こそ、是が非でも成功させたいところだ。

 興味深いのは、TOBの発表直後、3月1日(日本は2日)の株価である。アステラスが前日比70円安の3275円と弱含みだったのに対し、OSIは同約50%増の56.25ドルまで急騰するという、対照的な動きを見せた。

 アステラスの株価は、「買収に対する好感と悲観が拮抗した結果」(あるアナリスト)といわれる。

 “好感派”はOSIの買収実現で、新薬のタネが増えると評価した。アステラスは、主力薬の特許切れで安価な後発薬にシェアを奪われ、大幅な収益悪化が懸念されている。OSIが製造・販売する肺ガン治療の経口薬「タルセバ」や、ガン領域を中心とする複数の新薬候補は魅力だ。

 一方、“悲観派”は最大3100億円に上る買収額の大きさや、研究開発資産を含むのれん代の償却負担を嫌った。OSIの業績は、売上高約380億円、純利益69億円。アステラスは売上高1兆円に対し現預金等が4000億円超とキャッシュリッチだが、運転資本を割り引いて考えれば、やはり3000億円を超える投資負担は大きい。

 ではOSIの株価急騰はなぜか。アステラスは買い取り価格として、前日終値に40%のプレミアムを加えた52ドルを提示したが、OSIの1日の株価はこれをも上回った。どうやら「タルセバの販売権を有するスイスのロシュ社が、それ以上の条件でホワイトナイトとして出現する」(投資家筋)との期待が株価を押し上げた模様だ。

 アステラスは“当て馬”に終わるのか──。買い取り期限の3月末日、その結論が下る。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柴田むつみ)

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