だるい、疲れやすいと頼ってしまう<br />サプリメントの効果はあるのか?Photo: Adobe Stock

知っておきたい、
最新の健康常識とは?

世の中には、さまざまな「健康常識」が広まっています。それらは、はたして素直に信じていいものなのか。もちろん、早寝早起きが体にいいとか、バランスの取れた食事が大切とか、役に立つ「常識」もたくさんあるでしょう。しかし、本書に書いた「中年になったら朝立ちはなくても当たり前だし、必要もない」という「常識」は、完全に間違いです。
また元気のないのは年だから仕方がない。あるいは「『うつ』は心の問題だから、精神科に行かないと治らない」という思い込みに縛られるのは、とても危険です。今回は、私が診療をしていて、よく聞かれることをQ&A方式でお答えします。みなさんには、ぜひ新しい健康常識を知ってもらいたいものです。

Q
体調が気になったら、
サプリメントも使うべき?

「体に必要な栄養成分は、サプリメントを飲めば補充できる」というのは疑ったほうがいい「常識」のひとつです。普段はジャンクフードばかり食べている女性が「でも、サプリメントをこんなに飲んでいるから大丈夫」と言っているのをテレビで見たことがありますが、とんでもない間違いです。製薬会社の宣伝に騙されていると言ったら、製薬会社に怒られるでしょうか。栄養分は食べ物から摂取しないと、なかなかその役割を果たしてはくれません。

もちろん、食べ物からなかなか摂取できない栄養素が足りていない場合、補助的に摂取するのは有効な場合もあるかもしれません。しかし、薬を服用している場合や、数種類のサプリメントを服用する場合の「副作用」の方が危険です。患者さんも高齢になればなるほど、サプリメントなどを服用していて診察が進んでから「先生、実はこういうものを飲んでいて……」と言われ、飲み合わせに気を配らないといけないケースも多くあります。

また世の中には「これを飲めば男性ホルモンが増える」とうたっているサプリメントも少なくありません。まったく効果がないことはないのでしょうが、あったとしても微量の上昇です。
 

「マカ」「セサミン」の
効果は限定的

「マカ」「セサミン」などは、少し低下した段階では多少の増加補充はできても、体調不良といった症状が出ているほど著しく悪化した状態を改善するまでの補充をすることはできないのです。サプリメントで大幅に低下したテストステロン値が急上昇したり、いったん壊れた体の中のたんぱく質の立体構造が元の状態に戻ったりすることは、男性医学ひと筋に生きてきた私のキャリアを賭して申し上げますが、まず不可能です。

あるとき、高齢者向けに「このサプリメントを飲んで元気になった」と大々的に宣伝している会社がありました。広告には、私の大切な友人である登山家のM氏が登場していました。80歳を超えてエベレストに登った人物といえば、もうおわかりでしょう。

そして、その会社はM氏の男性ホルモン値の上昇を示すグラフを広告に載せて、さもサプリメントのおかげで増加したようにうたっていたのです。しかし、M氏はかなり前から私の診察を受けて、男性ホルモンを補充する注射を打っていました。通常注射で男性ホルモンを補充した方々は、なかなかそれを公言したがらないのですが、M氏はあえてメディアや自著で「男性ホルモンは大事だ」と私の名前も合わせて言ってくれました。とても感謝しています。

さて、問題は、その会社です。広告の男性ホルモンの増加による効果を示すグラフは私が作ったもので、それはホルモン補充で数値が上がった状態を示しています。サプリメントのおかげではありません。私は不服に思い、その会社に「大勢の人に誤解させてしまう」と連絡しました。すると、その会社の責任者があわてて飛んできて「大変申し訳ありませんでした」と平謝りし、すぐに広告の内容を取り消しました。宣伝を見ていた大勢の人の誤解が解けるように、と祈るばかりです。