第3章

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 殿塚、村津、森嶋がユニバの研究所を出たときには、陽は沈んでいた。

 殿塚はさすがに疲れているのか、口数が少なくなっている。しかし興奮は隠しきれない様子だった。殿塚がライフワークとしている道州制の導入には、あの会議システムは確かに有効なものだ。道州間、そしてさらに重要になる中央政府とのコミュニケーションが密になり距離感も目に見えて縮まる。

「私は議員会館に寄っていく。君たちはどうする」

「まだ仕事ですか」

「私の時間は君らとは違うんだ」

「お身体だけは大切に」

 村津と森嶋は殿塚を残して、新橋で車を降りた。

 村津の誘いで、地下鉄近くのコーヒーショップに入った。

「あれらは殿塚さんの尽力ですか」

「いや、先生も今日初めて見学した。もっと形が整ってからと思っていたが、そうも言っていられなくなった」

 村津は昨日からの状況を言っているのだ。確かに今も町中が殺気立っている気がする。

「私と長谷川さんとで各企業に働きかけていた。新日本建設の室山さんとユニバの玉井さんは前に話した通りだ。船山さんと鳥居さんは2人の紹介だ。あとは彼らから提案があって、むしろ私はただ感心して見ているだけだった。日本のICT業界総力を挙げての取り組みだ。あれだけのシステムの構築は、我々が考えるより遥かに難しいらしい。世界に誇れるものだ」

「政府の補助はまったく出ていないんですか」

「当てにしていたら何も出来ない。政治家には危機感も義務感もなさすぎる。殿塚先生だけは別だが」

 村津はかすかに息を吐いた。

「私は首都移転は政治家ではムリだと思っている」

 村津は言った。