前回、「時間軸効果」について述べた。「量的緩和政策は経済の実態面には直接の効果を与えなかったが、時間軸効果の点では有効だった」というのが日本銀行の立場である。この問題を、もう少し論じよう。

なぜ長期金利が下がるか?

 中央銀行が金融政策によって直接に影響を与えられるのは、短期金利である。

 これは、つぎのようなメカニズムによる。日本銀行は、公開市場操作で市場から国債などを購入し、その代金を日銀当座預金に振り込む。すると、銀行はコール市場で資金を調達する必要がなくなるので、コール市場の金利が下がるのである。

 前回述べた「時間軸効果」は、「中央銀行が金融緩和の継続を約束することによって、(直接的にはコントロールすることができない)長期金利に対しても影響を与えることが可能であり、その結果イールドカーブがフラットになる」というものだ。

 イールドカーブの理論に即して言えば、長期金利が低下するのは、つぎの2つの理由による。

 第1に、将来の金融緩和が約束されたために、借り手のリスクプレミアムが縮小する。

 第2に、将来の短期金利の期待値が低下する。

 実際のデータを見ても、量的緩和政策について「時間軸効果」が確認されるというのが日銀の立場である。

 これに関して、つぎの諸点を指摘することができる。