NHKスペシャル『食の起源「ご飯」』では、白米が長寿食なのか肥満の元凶なのかを特集。ジャニーズ事務所の人気グループ「TOKIO」がMCを務めたことで注目を集め、糖質制限の是非をめぐる論争も盛り上がってきた。食事術への関心が高まるのはいいが、生化学的な知識が欠落していたり、歴史考証が甘いまま番組を見ていると、間違った食の知識を「健康にいい」と誤解してしまう懸念もある。今回は、NHKの番組で関心の高まった日本人と白米の関係」「人類史から考える糖質制限の効果」について、『医者が教える食事術2 実践バイブル』の中から抜粋して紹介する。

「ご飯は日本人のソウルフード」は誤解!<br />医者が糖質制限をすすめる理由Photo: Adobe Stock

白米も砂糖も糖質の最後は
中性脂肪になって太る原因に

「ご飯」の功罪を論じる前に、本連載ではたびたび紹介してきましたが、白米や砂糖などの糖質がなぜ肥満を招き、どうして食べすぎるべきではないのか、その基本を押さえたいと思います。

 糖質には多糖類、二糖類、単糖類があります。米やパン、パスタ、イモなどは多糖類、砂糖は二糖類、果物に含まれる果糖やブドウ糖は単糖類です。

 多糖類はブドウ糖がたくさん連なったもので、二糖類はブドウ糖や果糖が2つ連なったものです。いずれも、消化酵素によって、最終的にはすべて1個1個のブドウ糖や果糖に分解されます。

 テレビの健康情報番組などで中途半端な情報を仕入れ、「単糖類は太るけど多糖類なら太らないから白米はいくら食べても太らない」といった誤解をしないでください。

 そばを食べてもジャガイモを食べてもスナック菓子を食べても、最終的には全部、ブドウ糖に分解され、吸収されて血液中に放出されます。このブドウ糖は、直接的なエネルギー源となります。

 マラソン選手などは、レースの前に炭水化物を多めに食べますが、おそらく、食べた分のエネルギーはレース中に使い切ってしまうことでしょう。

 しかしながら、一般人の生活では、食後に血中のブドウ糖が余ります。このとき、血糖値が上がりすぎないように、インスリンというホルモンが分泌され、余ったブドウ糖を処理します。

 具体的には、インスリンが、余ったブドウ糖をグリコーゲンに変えて、肝臓や筋肉の細胞に取り込みます。それでも余ったブドウ糖は、今度は中性脂肪に形を変えて脂肪細胞に取り込まれます。これが太る原因です。

 だから、やせたいと思ったら、この逆をやっていくしかありません。糖質の摂取を控えると、肝臓や筋肉の細胞に備蓄されていてグリコーゲンがブドウ糖に戻され、エネルギーとして使われます。
 それでも足りない分は、脂肪細胞に取り込まれた中性脂肪が脂肪酸に分解されてエネルギーになり燃やされます。ここまでくれば、やっとやせるわけです。ダイエットには糖質制限が有効なのはこうした理由があるからです。