脱プラスチックにあの手この手、苦戦する大手企業ニューヨークの食料品店「プレサイクル」の売りは、プラスチックの袋や容器を一切使用していない点だ Photo:SANGSUK SYLVIA KANG FOR THE WALL STREET JOURNAL

 使い捨てプラスチックに対する反発が高まる中、大手メーカーは急いで容器や包装材料の見直しに乗り出した。だが現在までのところ、こうした企業は苦戦を強いられている。

 プラスチックゴミや関連の温暖化ガス排出問題に対処するため、英蘭系日用品大手ユニリーバやスイスの食品大手ネスレなどの消費財メーカーはプラスチックの使用量を減らし、他の素材に切り替えたり、顧客に詰め替え可能な容器の利用を促したりなどを試行している。しかし、そうした取り組みには難題が立ちはだかる。紙やガラスへの切り替えにも別の環境面のデメリットがあるほか、ビンなどの中身を詰め替えるやり方は高くつき、不便なことが多い。取り組みは現在のところ小規模で、拡大するかどうかは不明だ。

 ユニリーバの研究開発部門トップ、リチャード・スレーター氏は、プラスチックの削減は「最もイノベーション(技術革新)を要する分野だ」と話す。「ダブ」の石けんや「ヘルマン」のマヨネーズなどのブランドを持つユニリーバは年間70万トンのプラスチックを容器に使用しており、そのうち10万トンを2025年までに削減することを最近約束した。容器の再利用や包装を小さくすること、素材の変更などを想定している。

 ユニリーバは最近、アイスクリーム「ソレロ」のパック製品について、アイスの個別包装をやめた。代わりに仕切りが付いた厚紙の箱を使用し、厚紙の表面にポリエチレンコーティングを施すことで、プラスチックを35%削減した。また住居用洗剤「ジフ」については、水で薄めて使う濃縮版を再利用可能なスプレーボトルを付けて発売。プラスチックを75%削減した。

 ソレロの変更は季節限定商品1種類だけが対象で、販売も英国の小売店1社に限られる。一方、ジフの詰め替え品はプラスチックのパッケージ入りで、安全のためにリサイクル不能なプラスチックの密封材で包装されている。こちらも販売は英国限定だ。

脱プラスチックにあの手この手、苦戦する大手企業

 スレーター氏は、ユニリーバのプラスチック削減の取り組みは「非常にニッチ」だとしながらも、どの方法が有効かを探るために小さな規模で始める必要があると話す。「厄介なのは、これを大規模にやらなければならないことだ」

 消費財メーカーはバージンプラスチック(再生材ではなく新品の材料を使用したプラスチック)を削減することで、顧客にアピールし、規制に対応または先んじようとしている。ユニリーバは2025年までにバージンプラスチックの利用を半減する計画で、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は30年までにそれを達成すると表明している。米菓子メーカー大手マーズや米食品・飲料大手ペプシコも同様の計画をしている。