多くの著名人から絶賛され、講演依頼も殺到している藤原和博氏の「100万人に1人の存在になる方法」。本連載では、そのノウハウが凝縮された藤原和博氏の最新刊『100万人に1人の存在になる方法ーー不透明な未来を生き延びるための人生戦略』の内容を抜粋しながら、未来への不安が一掃される絶対に食える「キャリアの必勝法」を紹介していく。

AI時代は仕事を「かけ算」して生き残れ【藤原和博】Photo: Adobe Stock

目指すのは「オリンピックのメダリスト級」
―自分で競技のルールを決められるキャリアを築く

 まず、断っておかなければならないことがある。

 100万分の1のレアカードになることは、だいたい同じ確率の「オリンピックのメダリスト級」の一流の人材になることを意味するが、これは「オリンピックのメダリスト」になることとは根本的に違う。

 もちろん、ビジネスパーソンとして一流を目指すことと、アスリートとして一流を目指すこととは、練習のメニューからその内容までがまるで違うことは説明の必要もないだろう。

 しかし、私が指摘したいのはそういうことではない。

 「オリンピックのメダリスト」が100万分の1のレアさをゲットするには、陸上競技でも水泳でも体操でもフィギュアスケートでも、その頂点を目指す者が世界中に100万人いたとしたら、99万9997人を倒して、最後の金・銀・銅メダルの3人に残らなければいけない。

 チーム競技ならそのメンバー数をかけることになるが、金メダルを取るのは、99万9980人の上に立つ20人程度になるだろう。

 文字通り、100万人のピラミッドの頂点に立つことになる。

 これに対して、「オリンピックのメダリスト級」の100万人に1人の存在になるというのは、どの世界で戦うか、オリンピックで言えば、どの競技で戦うのかは、自分の判断に委ねられる。

 たとえば、20代、30代は「営業」の世界と「広報」の世界でキャリアを重ね、それぞれ100人に1人の存在になれたら、40代で「旅館経営」の世界にジャンプしてもいい。

 「旅館経営」でも1万時間経験を積めば、やはり100人に1人の旅館経営者になれるだろうから、「営業」と「広報」の経験も生かしながら100分の1×100分の1×100分の1=100万分の1の「希少性」が確保できるだろう。

 最初のキャリアを旅行会社からスタートして「ツアコン」として腕を磨いてから、30代で子どもの頃から好きだった犬とともに生きる世界に身を転じ、犬の訓練士としてのキャリアを積んでから、介護の世界にジャンプしてもいい。

 この場合には、「入所しているお年寄りを旅行に連れ出すこともでき、施設で飼っている犬でドッグセラピーもできる、たいへん希少な介護施設の介護士や施設長」というユニークな立ち位置が保証される。

 「オリンピックのメダリスト」のアスリートは、縦に高いピラミッドの頂点。

 それに対して「オリンピックのメダリスト級」のビジネスパーソンは、横に開けた世界で、ただ1人、自分だけの「旗」を立てるイメージだ。

 月に最初に降り立ったアポロ11号のアームストロング船長が、まず、最初にアメリカの国旗を月面に掲げたのと同じように。

 だから、金メダルを取るのに99万9999人を倒す必要はない。1つの世界で100人に1人を達成することを3つかければいいだけだから、最後は、自分自身でビジネス、つまり競技のルールや競技の場所を決めればいいのだ。