日本の市町村の区域に配置され、高齢者や障害者、子育てや介護をしている人の相談役として行政との橋渡しをする民生委員。しかし現在、そのなり手不足が全国的に課題となっている。知名度の低さや多岐にわたる業務などがあり、応募が少ないのが主な理由だという。そんな民生委員の現状について、社会福祉について詳しい同志社大学教授の上野谷加代子氏に話を聞いた。(清談社 沼澤典史)

地域のあらゆることの相談役
民生委員の仕事とは?

民生委員の相談のイメージ地域住民の「困りごと」の相談にのる民生委員。一人暮らし世帯の安否確認から子育てや認知症の親を抱える家庭の相談など、業務内容は多岐にわたる Photo:PIXTA

「現在、全国の市区町村に約23万人の民生委員が厚生労働大臣の委嘱(任期3年、再任あり)で活動しています。彼らは特別職の地方公務員として、地域住民の身近な相談役となり、専門機関へのつなぎ役として、家庭訪問や支援などに携わっています」

 そもそも民生委員制度は、1917年に始まった岡山県の「済世顧問制度」に起源を持つ。その後、1928年に全国に普及し、1946年に「民生委員」と改称された。

 地域に貢献する重要な役割といえる民生委員だが、基本的には無給である。活動費として、交通費や電話代などは支給されるが、ほとんどボランティアで地域の奉仕者として活動しているのだ。

「民生委員は町内会や市町村の長から推薦された人が、推薦委員会などの審査を通って任命されます。地域に住民票があり、信頼の厚さなどが様々な面で評価されて決められます。仕事内容についても、誰かから割り振られるというものではなく、自発的なボランティア活動、というような形で活動されています」

 一人暮らし世帯の安否確認や、子育てや認知症の親の相談などを受け、行政やその他の専門機関へ報告するなど、業務内容は多岐にわたる。