15兆円の洋上風力バブル_04Photo:LonelySnailDesign/gettyimages、Illustration by Saekichi Kojima

“バブル”の様相を呈している日本の洋上風力発電プロジェクトに、電力、ゼネコン、再生可能エネルギー事業者、総合商社、石油元売り、漁業者、ブレードメーカー、外資系発電事業者、そして銀行が群がる。バブルの“ババ”を引くのは、いったい誰なのか。特集「15兆円の洋上風力バブル」(全5回)の#04では、取材を基に9業界のババ引き危険度を明らかにした。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

シェール革命で大やけど
洋上風力発電のデジャビュ

 再生可能エネルギー事業の“最後の楽園”といわれる洋上風力発電に電力、ゼネコン、商社など多種多様な業界が群がっている。このバブル感は“あのとき”の状況に似ていると指摘するエネルギー業界関係者は少なくない。

 あのときとは、二つある。一つは太陽光バブルだ。2012年に太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が始まり、全国の至る所に太陽光パネルが敷設された。その後、買い取り価格が下がると、コスト削減に対応できないプレーヤーが続出し、太陽光バブルははじけた。

 もう一つのデジャビュは、シェール革命である。

 11年の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、日本の電力・ガス会社や総合商社は最重要課題である「電力の安定供給」のため、原発の代替エネルギー、特に火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)の確保に世界中を駆けずり回った。

 運の悪いことに当時は原油価格が1バレル当たり100ドル前後まで高騰し、原油価格に連動するLNGも高騰。産ガス国の言うままに高値でつかまされ、電力各社は最終赤字に転落、ガス会社も収益を圧迫された。

 折しも、海の向こうの米国はシェール革命の真っただ中だった。

 シェール革命とは、技術革新によって頁岩(けつがん、シェール)層にあるシェールガスやシェールオイルを取り出すことに成功し、米国の原油天然ガスの生産量が拡大したことを指す。

 シェール革命で生み出される米国産LNGは原油価格に連動しない。日本企業にとって、“救世主”に映っただろう。

 多くの日本企業がシェール関連のプロジェクトに資金をつぎ込んだ。そして大やけどしたのである。

 14年に1バレル当たり100ドルを付けた原油価格が15年には同40ドル台に急落したことで、採算割れするプロジェクトが続出した。

 1992億円の巨額損失を出した住友商事や、伊藤忠商事などの総合商社をはじめ、東京ガスや大阪ガスなどのエネルギー業界、はたまたプラントメーカーの東芝のような畑違いのプレーヤーまでシェール革命の“犠牲者”となった。

 今、日本の洋上風力発電事業はバブルの様相を呈している。しかし、海外で洋上風力発電プロジェクトに携わった経験を持つある商社関係者は「洋上風力発電を甘く見過ぎている。痛い目に遭う企業が続出する」と警鐘を鳴らす。

 ノウハウを持たずに洋上風力発電プロジェクトへむやみに資金をつぎ込もうとしているプレーヤーが多い。シェール革命で大やけどを負った背景にも、経験不足による甘さがあった。新規ビジネスにリスクは付きものだが、巨額の投資を伴う洋上風力発電のリスクは大きい。

 トランプのババ抜きのように、リスクが顕在化して“ババ”を引くのは誰なのか。

 洋上風力発電に詳しい業界関係者ら20人以上への取材を基に、洋上風力発電プロジェクトでババを引きそうな業界を、危険度別に独自に分類した。