「スタートアップに事業計画は必要ない」といった声を耳にすることがありますが、それでは、スタートアップはどのタイミングから、どのくらいの粒度でビジネスプランを作るべきなのでしょうか。未上場スタートアップ、新興上場企業に対する経営支援事業、並びに産業金融事業を行うシニフィアンの共同代表3人が大企業での事業計画策定との違いも参照しながら、語り合います。

朝倉祐介さんらシニフィアン共同代表3人が考える「スタートアップはどこまで詳細に事業計画を作り込むべきか?」Photo: Adobe Stock

事業計画を作る適正タイミング

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):今回は事業計画の立て方について考えてみたいと思います。大企業では、社外向けのコミュニケーションや社内向けの管理のために、事業の成長を反映した事業計画や中期経営計画を立てますよね。
一方で、これからプロダクトを開発しようとしているシード段階のスタートアップでは、事業計画など立てようがない、作る意味がないといった声をよく耳にします。そのフェーズでは、事業計画を考えるよりも、プロダクトのコンセプトなどを考えることのほうが重要であるという考え方ですね。
それでは、どのタイミングからどの程度の粒度で事業計画を作るのがいいのか、考えてみましょう。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):いくつかの視点に分けて議論しましょう。まず、会社を作る側の視点から考えると、事業計画を作れないタイミングでは作ってはいけないし、作る必要もないと思います。無理やりに作ったとしても、そこに反映されている数値に意味はないでしょう。「事業の将来性を考えると計画としてはこんな感じだろうな」というイメージが湧くフェーズであることが、事業計画を作成するうえでの必要条件だと思います。

もう一つの視点は、外部とのコミュニケーションにおける事業計画の意義です。会社が存続していくと、必然的にステークホルダー(利害関係者)が増えていきます。従業員や株主、新規の資金調達先、アライアンス先などが増えてくるにつれて、そうした方々の期待レベルに合致した物が提示できないと、会社としてコミュニケーションがしづらいという状況が出てきます。
事業計画を作る適正なタイミングについては、自社の視点と外部とのコミュニケーション上の必要性という2つの観点から検討すべきであるというのが、基本的な考え方です。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):最近はリーンキャンバスなど、改変性が高く、トライ&エラーがしやすいフォーマットを通じて事業の説明が行われるようになっていますが、自分たちが一体何を試しているのか、どんな仮設を検証しようとしているのかを認識することは大切だと思います。
私は、事業計画の作り方が分からない状況であっても、何かしら自社の取り組みを表現する試みは必要なんじゃないかと考えています。