ソーシャルワーカー養成方針改定にチラ見えする「生活保護節約」の思惑これからのソーシャルワークは、生活保護を使わせないことが目的になるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生活保護、行政、財政から
遠ざけられるソーシャルワーカー

 2019年12月20日、社会福祉士と精神保健福祉士の養成カリキュラムを改定する省令案が公開され、パブリックコメント(パブコメ)の受付が開始された。パブコメは、年末年始の9連休を挟んで、2020年1月18日まで募集される。省令案は2月に公示され、2020年度からの養成課程に反映される。

 とはいえ、年度末の印刷・製本・流通の事情を考えると、改定後のカリキュラムに対応したテキストの準備は、すでに完了していても不思議ではない。年末年始を挟んだ時期のパブコメ募集については、「パブコメを提出されたくないから」という見方もある。

 変更点として目につくのは、まず「生活保護」「行財政(行政+財政)」が科目名から消えることだ。現在、社会福祉士・精神保健福祉士のいずれの養成課程にも、科目「低所得者に対する支援と生活保護制度」「福祉行財政と福祉計画」が含まれているのだが、これらが科目名としては消滅する。含まれる内容は、新設される「貧困に対する支援」「地域福祉と包括的支援体制」などの科目で習得することになる。

 いずれにしても、科目名から「低所得者」「生活保護」「行財政」が消えるということは、その人々への注目や、生活保護という制度の重みや、政府や地方自治体が果たすべき役割が減る、ということではないだろうか。筆者は、どうしてもその懸念を拭えない。

 生活保護という制度があり、生活保護法という法律があり、憲法第25条に「生存権」が定められていることは、日本の“常識“であろう。しかし生活保護という制度の運用を具体的に理解するのは、容易なことではない。生活保護法の100条に満たない条文では、制度の骨組みだけが規定されている。具体的に内容を肉付けするのは、合計1500ページに達する通知や施行規則類である。