「人質司法」に挑む日本人CEO、ゴーン氏同様に勾留自身の会社が建設した道路擁壁の前に立つ酒井政修氏 Photo:Shiho Fukada for The Wall Street Journal

 【東京】79日間にわたって勾留された酒井政修氏(63)は、長時間座らされた苦痛に耐えられず、罪を告白した。しかし彼は、そんな罪は犯していないと語っている。

 建設会社のオーナーである酒井氏は、係官の指示の下、勾留施設の中で立ち上がることも、横になることもできなかった。皮膚の床ずれがヒリヒリ痛み、家族が恋しくなった。家族との面会は許されず、彼の弁護士は、すべてを認めることを彼に促した。

 酒井氏によると、彼は、毎日のように尋問を受けても一歩も引かず、9700万円での青梅市発注の道路擁壁工事の契約受注について、公契約関係競争入札妨害(談合)の罪を犯していないと主張し続けた。しかし、2018年9月にようやく公判が始まると、彼は有罪を認め、少なくとも裁判が終わるまでの間は自宅に戻れることになった。

 裁判所は、彼に有罪を言い渡すための第2回公判の日程を正式に決めた。日本の検察は、起訴した被告の99%以上の有罪率という記録に新たな勝利を追加できるはずだった。

 しかし酒井氏の妻の成子さんは諦めなかった。眠れぬ夜が続く中、インターネット上で別の弁護士を探し出し、午前3時に連絡を取った。わらにもすがる思いだったと彼女は語っている。

 新しい弁護士が弁護を引き受け、酒井氏は、無罪に主張を変えた。これは今回の裁判における最初の転換点であり、その後のより大きな驚きの展開につながることになる。