大分で生まれ、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま、ハーバード大学に現役合格した『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』の著者・廣津留すみれさん。

ハーバードを首席で卒業後、幼い頃から続けているバイオリンを武器にニューヨークのジュリアード音楽院に進学、こちらも首席で卒業した。

現在はニューヨークを拠点に、バイオリニストとして活動しながら、起業家としても活躍している。

日本から突如、世界のトップ校に飛び込み、途方に暮れるような大量の難題を前に、どう考え、どう取り組み、どう解決していったのか?

著者が学び、実践してきたハーバード流の考える力について、自身の経験を下敷きに、どうすれば個人・組織が実践できるかを、事例やエピソードとともにわかりやすく紹介する。

難しいことを<br />やさしく<br />やさしいことを<br />深く話そうPhoto: Adobe Stock

難しいことを
やさしく
やさしいことを
深く話そう

 私の印象では、頭のいい人ほど難しい言葉を使わないで話す能力が高いです。

 日本で難しい言葉というと、まだあまり一般化していないカタカナ語や古代中国の古典由来の漢字言葉などでしょうか。

 アメリカでも同様に、母国語の英語由来ではなく、あまり使われないギリシャ語やラテン語由来の言葉や、特定の分野で話される専門用語がそれに相当します。

 ハーバード生が、これらのいわゆる難しい言葉で、難しいことを語る場面にはあまり遭遇しませんでした。

 他にいい換えられない専門用語や、同じ専攻の仲間や教授との専門的な議論なら話は別ですが、それ以外のタイミングで、もし難しい言葉を使ったら「気どってるの?」と不思議そうな顔をされて終わりです。

 その理由は2つあると思います。

 1つは相手にできるだけわかりやすく物事を伝えたいという気持ちが強いこと。もう1つは相手がその言葉がわからない場合、それを説明するために費やす時間がお互いにとってムダだからです。

 難しい言葉をそのまま使ってしまう人は、一見すると頭がよさそうですが、実のところ本人がまだ完全に内容を理解していないだけかもしれません。

 誰かに理解してもらいたいと思ったら、劇作家の井上ひさしさんの名言にあるように「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」と、できるだけわかりやすい言葉で伝えようとするはずです。

 本当に頭のいい人は理解力が高いだけに、難しい言葉を使わなくても、やさしくてシンプルな言葉で伝えられます。

 難しい言葉を持ち出さないと説明できないとしたら、本質が理解できていない証拠かもしれません。

 やさしい言葉でシンプルに伝えられるようになるまで、もう一段階掘り下げて理解してみるといいと思います。

 難しい言葉で説明して自己満足してませんか?