先進医療から選定療養へ 白内障の多焦点眼内レンズ写真はイメージです Photo:PIXTA

 昨年末に開かれた「中央社会保険医療協議会(中医協)」で、白内障の水晶体再建術に対する「多焦点眼内レンズ(多焦点レンズ)」を現在の先進医療から、4月以降「選定療養」に変更することが大筋で合意された。

 先進医療枠では、手術費用と材料費(レンズ代)が自己負担で、付随する検査費や薬剤費、入院費は保険が適用(原則3割負担)されてきた。

 選定療養に変更された後は、多焦点レンズ代のみが自己負担で、手術費以下の諸費用は単焦点眼内レンズを使ったケースと同じく全て保険適用となる。民間保険の「先進医療特約」がある人(両親の場合も)は、3月中に手術をすると費用が抑えられるだろう。ただ、費用面だけに気を取られた駆け込み手術はお勧めしない。

 多焦点レンズとは、平たくいうと「遠近両用レンズ」のこと。単焦点の眼内レンズが一つの距離にピントを合わせるのに対し、多焦点レンズは二つの距離、あるいは三つ(近・中間・遠)の距離にピントを合わせることができる。

 たとえば手元~中間距離(30cm~2mほど)に合わせた場合、老眼鏡をかけたり外したりする煩わしさから解放される。水晶体再建術後に「裸眼」で過ごせる可能性があるわけだ。

 多焦点レンズのデメリットは、同時に複数箇所にピントが合う点で、外から入ってくる光を複数に振り分けることから生じる。

 まず、100%の光源で見る単焦点とは違い、微妙な濃淡や明暗の差に対する感度が低く、見え方がぼんやりする。4Kテレビとそれ以前に例えるとわかりやすい。

 このほか薄暗いところで光を振り分ける際に光が乱反射し、街灯や車のヘッドライトが散乱してぎらつく「ハロー・グレア現象」が生じることがある。脳の視覚野が新たな情報処理に慣れるに従い気にならなくなるが、夜間の車の運転には注意が必要だ。どうしても慣れないときは、単焦点眼内レンズへ変更するケースが多い。

 現在、多焦点レンズの価格は50万~100万円前後(片目)。価格もそうだが、十分にメリット、デメリットを理解して選択しよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)