テストの点で測れない「非認知能力」=「考える力」「やり抜く力」「折れない心」の土台は、親が子どもの話を聞くことから作られる! 『自己肯定感で子どもが伸びる12歳からの心と脳の育て方』の著者で、30年以上臨床の場で多くの親子を見続けている医師が断言します。本連載では、子どもの脳を傷つけないで「あと伸びする子」に育てるためのノウハウを、著者が接してきた実例とともに紹介していきます。子どもへの接し方に悩むすべての大人、必読!

子どもの脳を傷つける<br />親の言動とは?Photo: Adobe Stock

「怖い」「心配」という恐怖体験が
記憶としてたまっていく

 子どもの行動の背景には、小さいころからの親の養育態度が大きく影響する例を、私は診療の場で数多く見てきています。

 特殊な環境でなくても、両親がいつもけんかをしていれば、子どもたちは日常的に「怒鳴り声」や「キツイ口調」「厳しい顔」などの不快な情報を受け取っていることになります。さらに、子ども自身に怒りや罵倒が向けられた場合は、「恐怖の体験」としてさらに強い刺激になってしまいます。たとえ赤ちゃんであっても、光や音を感じることはでき、それが自分にとって心地よいものか、不快なものかは、本能的に判断できます。「怖い」「心配」という恐怖体験は、何が起こっているのか、またその背景については理解できなくても、記憶となって蓄積されるのです。

驚愕! 恐怖の体験が
脳画像に映る傷を生んでいる

 母親が父親から暴力を受けているDV(ドメスティック・バイオレンス)のある家庭で育ち、人の怒鳴り声や暴力的なシーンを受け取り続けている子どもは、脳の特定領域の発達にブレーキがかかることが研究結果で示されています。

 このような子どもたちの脳画像検査を行うと、視覚情報や聴覚情報の処理を担当する脳の後ろ側の部分に萎縮や損傷が見られることが報告されています。このことは、その後に発達する脳の中央部や前側の部分にも影響がでてくる、つまり発達にブレーキがかかるといえます。

 恐怖体験をもつ人が、自分の感情を保つことが難しいのは、心理的な要因だけではなく、脳が傷ついているという物理的な要因もあることがわかってきたのです。とくに小さい子どもの前では、穏やかな状態を保つよう大人が気をつけていただきたいと思います。

(次回に続く)