かつて経営危機に陥っていた双日。その復活の条件は優先株の一掃、復配、格付け会社による投資適格級の格付け獲得の3つだった。

 現在、優先株の一掃、復配を実現。格付け会社2社から投資適格級を獲得、残すところはあと1社の格付け見直しだけとなった。

 しかし、そうした自らが挙げた条件よりも、復活を雄弁に物語っていることがある。かつて退職した社員が続々復帰しているのだ。

 双日の前身である日商岩井とニチメンは2003年の合併に向けて、両社間で人員削減の条件を設定した。その間、多くの社員が離れていった。

 ところが、この3年間でかつて日商岩井やニチメンに籍を置いていた社員六64人が再び双日に復帰しているのだ。同期間の中途入社社員の数が225人というから、3分の1近くを占める。30代後半から40代の社員が多いという。

 「スキルは保証されているし、社風もわかっている。まさに即戦力」(西村俊郎人事総務部長)

 即戦力どころか、さらにパワーアップしているケースもあるという。たとえば、かつて機械部門にいた社員が、機械メーカーに転職し、商社内部ではとても得ることのできない、知識、ノウハウを得たとする。再び機械部門に復職すれば、ノウハウが大いに役立つ。

 同社は2006年度から業績の急回復を目指した3年間の中期経営計画「New Stage2008」を進めている。新卒社員や教育の必要な中途社員を採用していては、とても3年では実現できないという事情もあった。

 じつは西村部長も2000年に日商岩井を退職している。退職後は、失業手当をもらうために職業安定所に並んだこともあるという。「日本の企業には“わが社の常識は社会の非常識”という面がある。会社の外に出て初めてわかることが多かった」。

 転職して双日のよい部分、悪い部分を客観的に把握した復帰組の存在が、社内の意識改革に役立っているというのだ。

 そのせいか、復帰組に対する風当たりは強くなく、「業績が回復した途端に戻ってくるなんて」という批判はほとんどないという。

 来年も30~40人の中途採用を予定しているが、その半数が復帰組になる可能性もあるという。

 今後、少子化などでますます企業の人材確保が困難になるなかで、双日のような退職者の再雇用は広がっていくかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)