接骨・鍼灸・マッサージの深い闇#3Illustration by Mari Mitsumi

「痛み」市場を奪い合うプレーヤーの中で、逆風が吹く接骨院・柔道整復師の業界とは対照的に「あはき」と呼ばれるあん摩マッサージ指圧・鍼・灸業界の療養費は右肩上がりに増えている。さらに、業界の悲願であり、療養費をはね上げるとみられる「受領委任」が始まったが、吉と出るか凶と出るかは見方が分かれる。特集『接骨・鍼灸・マッサージの深い闇』(全6回)の#3は、「あはき」業界の未来を占う。

「週刊ダイヤモンド」2019年11月16日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

あん摩マッサージ指圧と
鍼・灸の頭文字を合わせて「あはき」

 流派により東洋と西洋に起源を持つ、あん摩マッサージ指圧(あマ指)。そして、中国発祥ながら日本で独自に発展を遂げた鍼灸。その国家資格、あマ指師、鍼師、灸師の頭文字を合わせて「あはき」と呼ぶ。まず、その施術目的につながる療養費(保険)の適用対象から見てみよう。

 外傷に療養費が適用される柔道整復とは違い、鍼灸は、神経痛やリウマチなど“慢性的”な痛みをもたらす6疾患を対象に、医師による適当な治療手段がない場合に保険が使える。一方、あマ指は具体的な診断名によることなく、筋麻痺や関節拘縮などの“症状”の改善を目的とする医療上のマッサージに保険適用ができる。

 そして、柔整療養費との最大の違いは、保険を使うには医師の同意書が前提となる点だ。つまり、保険適用のハードルが高い上に不正請求にもチェック機能が働くことから、あはきの飯の種は、保険とともに発展してきた柔整と違い、自費施術がベースとなっている。

 とはいえ、減少に転じた柔整療養費と異なり、あはき療養費は右肩上がりだ。