パウエル議長Photo:Reuters

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、米経済のあらゆる病気を診る「かかりつけの医師」となってきた。3日には、金融の医者たるFRBは、新型コロナウイルスによる経済的打撃への鎮静剤になるとの期待を込めた処置を行った。2日に相場が急騰していたこともあり、金融市場への治療効果は期待外れだった。これは、パンデミック(感染病の世界的大流行)による供給面のショックに対しては、利下げの効果が限定的であることを示しているのかもしれない。

 FRBは臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き下げ、1~1.25%とすることを全会一致で決めた。これ自体、大胆な行動だ。恐らくより重要なのは、FRBが同時に、銀行の超過準備に適用する付利を50bp引き下げ1.1%としたことだ。これは銀行にとっては、準備預金を実体経済に振り向ける動機を強めるものだ。

 利下げの背景には、積極的行動が、景気防衛の強いメッセージを発するための最良の手法だとの考え方があるように思える。恐らく今回の措置は、景気拡大への消費者の信頼感維持に寄与するだろう。企業の投資が低迷する状況下でも、消費支出によって経済成長が維持されてきた。他の諸国の中央銀行も、FRBの動きに追随する可能性が大きい。