新型コロナ禍のピークは?感染終息後の世界景気と金融市場を展望新型コロナ禍への各国の景気対策が本格化している。騒動が終息した後、世界景気や金融市場はどこへ向かうのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナの感染拡大
SARSと違い中国外に広がる

 新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の感染拡大に伴う世界的な株安の連鎖は、一旦止まった形だが、金融市場の不安定な動きは続いている。中国での感染拡大は、中国経済の落ち込みやサプライチェーンの滞りをもたらした。その後、韓国、イタリア、イランなど、中国以外の地域で新たな感染者が増加し、世界経済への下押し圧力が一段と増すとの不安も強まっている。足元では、減少していた新たな感染者数が再び増加基調に転じており、世界経済の先行きに対する警戒感は払拭されていない。

 感染症の拡大が経済活動にマイナスの影響を与えた例として、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS) が挙げられることが多い。SARS感染拡大の際には、中国の実質成長率(前年比)が2%ポイント低下し、アジアNIES諸国・地域、ASEAN諸国も、成長率を大きく下げた。しかし、感染の拡大が世界的なものにならなったことから、その他の国・地域の成長率の低下は小幅となり、先進国に新興国を加えた主要20カ国(G20)の実質成長率の低下は0.2%ポイントにとどまった。

 SARSの感染拡大時には、感染拡大の中心となった中国やアジア諸国・地域の経済活動の停滞がその他の国・地域に及んだ形だったが、今回の新型肺炎の感染拡大が世界的なものとなれば、中国以外の国・地域の景気にも直接的な下押し圧力が加わることになる。