ドナルド・トランプ米大統領Photo:Reuters

──筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 ドナルド・トランプ米大統領は10日、新型コロナウイルスが米経済に与える脅威に対処するため、新たな減税と景気刺激策を検討していると語った。これは正しい方向への一歩だが、成功が保証されているわけではない。トランプ氏は、現在の危機に対する米政権の誤った認識を克服しなければならない。また、他の政治指導者らとの協力が不可欠であり、彼らとの対立も克服しなければならない。

 米政府は、コロナウイルス感染症の流行抑制と経済を守る姿勢の間で、バランスを取るのに苦労している。米政府は、流行が起きた国との交通を迅速に遮断した。この措置は、当時は強硬すぎるように思えたが、もはやそうは言えなくなっている。政府はその後、この病気のリスクと米国内の感染状況を実際より軽く見るという、逆の方向に転換した。こうした対応は、しばしば誤解を招くような情報に基づいて行われた。

 トランプ氏は、株式市場重視の姿勢から、経済面の対応策の中心となるのは連邦準備制度理事会(FRB)による利下げだと主張してきた。そして依然としてこの考えにとらわれている。トランプ氏は10日、FRBへの攻撃を再開し、これまで以上の利下げを改めて要求。「利上げを急ぎすぎ、利下げを遅らせすぎたジェローム・パウエル氏率いる情けなく動きの鈍いFRBは、米国の競争相手の国々と同じレベルまで政策金利を引き下げるべきだ」とツイートした。

 FRB自体と大半のエコノミストらは、中央銀行にはウイルスの影響に対抗するための十分な武器、適切な武器がなく、こうした事態への対応策としては、財政政策の方がはるかにふさわしいと指摘している。しかし、トランプ氏の経済面のトップアドバイザーであるラリー・クドロー氏(米国家経済会議=NEC=委員長)は今月6日、財政面での大規模な景気刺激策の必要性を重視しない姿勢を示唆。「今回のウイルスの影響がどの程度になるかをわれわれは実際に把握していない。しかし、率直に言って、これまでは比較的抑制されているようにみえる」と語った。米政府は現在、時間給の労働者を救済し、打撃を受けている業界を支援するため、給与税減税を検討している。