倒産連鎖危機#地銀Photo:Ja inter/gettyimages

3月6日、麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣は「特段の配慮と事業者の実情に応じた柔軟な対応に全力を挙げて取り組むよう」、銀行に要請した。これは実質的に、“ゾンビ企業”を生むとの批判を浴びながら2013年3月にようやく終了した中小企業金融円滑化法の枠組みが“復活”したことを意味する。折も折、地方銀行業界には業績悪化懸念が渦巻いていたところだ。特集『倒産連鎖危機』の#7では、地元企業を徹底的に救済しながら自行の財務の健全性の維持を求められる地銀経営の悩ましさについてレポートする。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

政府から金融支援要請
地銀の“戦い”が始まった

「まずは頭の整理をしろ。安易にリスケ(貸し付け条件の変更)に応じるな」。関東のある大手地方銀行の営業担当役員は、新型コロナウイルスの影響で業績が落ち込む企業に対応する営業部員たちにこう“厳命”し、同時に部下を政府系金融機関である日本政策金融公庫に走らせた――。

 新型コロナウイルスは人々の外出意欲をそぎ、観光バス会社や飲食店、小売店などの経営をむしばんでいる。しかし、感染拡大に歯止めがかからない中では、もはや打撃を受けるのは限られた業種だけでは済みそうにない。特に、3月は年度末決算を迎え、資金繰りが厳しくなる企業が多い。地銀は、まさに顧客である多くの中小・零細企業の生殺与奪の権を握っている状態といえる。

 政府も地銀を含む銀行の出方にはかなりの注意を振り向けており、3月6日に麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣が「特段の配慮と事業者の実情に応じた柔軟な対応に全力を挙げて取り組むよう」、要請している。

 具体的には、銀行に対しリスケ等に応じるよう促すとともに、リスケの申込件数や実行件数などについて報告するよう求めている。つまり、存続させるべきではない“ゾンビ企業”を生み出すとの批判を浴びながら、2013年3月にようやく終了した中小企業金融円滑化法の枠組みを実質的に復活させるということだ。それほどまでに、新型コロナウイルスによる倒産を何としても食い止めようという政府の思いは強い。

 そんな中、なぜ冒頭の営業担当役員はリスケをけん制しているのか。実はそこには深い意味がある。