「貯蓄から投資へ」といくら言われても、手持ちのおカネの大半を、リスクを取る投資対象に投じたいと思う人ばかりではない。では、手持ちの金融資産の大半が銀行預金でいいかというと、2つ問題がある。安全性と利回りだ。

 いわゆるペイオフ解禁(全面解禁は2003年4月から)の前後には銀行預金の安全性が語られたが、最近はあまり話題に上らない。しかし、米国では今年に入ってからも複数の地方銀行が破綻したし、日本の銀行にも破綻リスクをまったく心配しなくていいとも言っていられない兆候が出てきた。

 8月末時点で、大手行の5年債(シニア)の国債に対するクレジット・スプレッドを見ると、メガバンク3行は30ベイシス・ポイント台(1bpは100分の1%)だが、新生銀行、あおぞら銀行では150bpを超えているという。

 金融業界の専門誌「週刊金融財政事情」(9月8日号)の記事によると、かつて公的資本注入を受けている両行が、再度破綻した場合に公的資本注入をまた受けられるかどうかを疑問視する向きがあるという。

 記事は、両行の健全性にただちに疑問が生じるわけではないとも書いているが、投資家のリスク認識に変化がなければクレジット・スプレッドの拡大は理解しにくい。

 見ている人は、見ているのだ。両行に限らず、銀行の破綻リスクをまったく意識しないというのは問題だろう。

 銀行破綻があったとしても、預金の大きな部分がカットされる事態は稀だろうが、銀行破綻の心配をすること自体が精神衛生に悪い。預金保険でカバーされない1000万円以上の預金を持っていると、自分の取引銀行以外の破綻のニュース(可能性も含めて)であっても、これを見た瞬間にいやな気持ちになったり、心配したりすることがありそうだ。