コロナ巡る米中の応酬、金融危機での協力と対照的Photo:Reuters

 中国の習近平国家主席は今月に入り、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けているフランス、イタリア、スペイン、ドイツの首脳に相次いで電話をかけ、マスクなど医療品の供給を含む支援を申し出た。唯一、電話をかけなかった相手がドナルド・トランプ米大統領だ。

 両首脳が最後に話したのは、新型ウイルスが中国で猛威を振るう一方で、米国ではまだ深刻化していなかった2月初旬。中国が貿易交渉の合意で確約した通り、米国産農産物を購入するのか協議するためだった。

 それ以降、両政府は新型ウイルスを巡り非難の応酬を繰り広げ、互いに不信感を募らせた。ここにきて、米中の対立は世界経済に対する支援を妨害する要因となっている。

「米大統領が終日、感染拡大の状況について『中国ウイルス』と呼ぶ中で、どう協力できるというのか」。ある中国政府の顧問はこう漏らす。ある米政府高官は「ウイルスの起源は米国だと疑いをかける中国当局の試みは、対策を講じる上で危険かつ非生産的であり、われわれは注視している」と反論する。

 トランプ、習両氏は26日、主要20カ国・地域(G20)首脳による動画会議に出席した。会合では、加盟国が世界経済の支援に向けて5兆ドル超を投じると表明。米中はともにその目標を支持したが、両首脳が直接言葉を交わすことはなかった。事情に詳しい関係筋が明らかにした。