首都圏「中高一貫校」、新学習指導要領を踏まえた入試問題の増加傾向が続く日本の禅の起源は天台宗にある。座禅のことを天台宗では止観(しかん)と呼ぶ。背骨を伸ばし、余計な力を抜いて呼吸し、心を整えることで集中力も高まっていく 写真提供:駒込中学高等学校

近年まれな激戦だった2020年の首都圏中学受験。前回は多様な入試について見たが、今回は志願者を増やした学校に改めて注目したい。これまでになかったような受験生の動きもうかがえる。(ダイヤモンド社教育情報)

新しい教育に沿う入試スタイルとは

 天台宗に「一隅(いちぐう)を照らす」という言葉がある。開祖である最澄が残した「一隅を照らす、 これ則ち国宝なり」が元で、「それぞれの立場で精いっぱい努力する人はみな何者にも代えがたい大事な国の宝」という意味である。

 駒込中は、この「一隅を照らす」とICTやSTEM、グローバルといった新しい教育をセットで展開するところに特徴がある。宗教系の学校というと、キリスト教系のミッションスクールが目に付くが、仏教系の学校にもユニークな教育を行っているところは多いのだ。

 2020年入試で駒込中の受験者数は顕著に増加した。実受験者数は2019年比+67人の459人(男子282人、女子117人)で、入学者数は同+52人の177人(男子108人、69人)と実に41%も増えている。

 2月1日午前に都立小石川、午後に千代田区立九段という中等教育学校の入試に準拠、2日には独自の内容でそれぞれ適性検査型入試を行ったところ、都立の白鷗、両国、桜修館、国立の学芸大附属竹早や東京大附属などの併願者を多く集めることに成功している。

 10ある都立一貫校の応募者平均倍率は2019年の6.02倍から5.74倍へと若干低下気味であり、実際、今年の駒込中の受験者増には私立型の2科・4科の貢献も大きかった。しかし、文京区という地の利を生かした適性検査型入試への取り組みは、この学校の進める新しい教育との親和性もあり、今後も広範な志願者の獲得に寄与することだろう。

 東京男子御三家の1つ、武蔵の入試は読解と記述中心である。「大学入試改革が進む中、普段の学習指導でも単なる知識やテクニックだけではなく物事の本質的な理解と応用が求められており、論理的に考えて『なぜそうなのか?』を常に問い続ける姿勢が重視されつつある」という見解のように、武蔵の入試は新しい学習指導要領にも時代の流れにも沿うものだ。武蔵の志願者数は2019年比+22人の601人で、3.8倍となった。

 2020年に大きく志願者を増やしたキリスト教主義の女子校に恵泉女学園がある。2020年は3回入試を行ったが、2月2日が安息日である日曜日だったことから第2回は午前から午後に変更、その結果、いずれも午後入試という他校に類を見ない入試となった。

 志願者を各回で+30~60%も増やしている。実質倍率も第1回2.5倍、第2回2.9倍、第3回に至っては9.2倍(前年は3.0倍)と著しく難化した。志願者が増えた半面、前年合格者の歩留まりがよく6クラスになったことを踏まえて、今年は合格者数を減らしたことも背景にある。

 歩いて移動可能な鷗友学園女子を筆頭に、日本女子大附属、香蘭女学校、田園調布学園など女子校との併願が多いのは例年通りだが、受験生の居住地に広がりが見られ、京王線沿線の調布や府中が増加、東京23区北部からの受験生も増えている点が今年の変化だろう。