大推薦時代到来!MARCH#1Illustration by Yuuki Nara

優秀な生徒を早く確保したい大学側、先行き不透明な入試制度改革を避けるため現役合格を志向する受験生、両者の意向が合致してAO・推薦入試での入学者は激増中。特集『大推薦時代到来!MARCH』(全7回)#1では、その実態と試験のポイントを詳しく解説する。

「週刊ダイヤモンド」2020年3月14日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。AO・推薦入試は2021年度から総合型選抜・学校推薦型選抜に名称変更

AO・推薦激増で学生と大学が右往左往
教育、入試、序列の大変化

 春といえば大学入学シーズンだ。晴れて希望の大学に合格した学生と、残念ながら希望がかなわなかった学生がいるのは何度も繰り返されてきた世の常である。

 しかし、昨今、かつてとは大きく変わったことがある。実は一般入試以外のAO(アドミッションオフィス)入試や推薦入試が激増していて、私立大学に至っては入学者の50%を超えているのだ。

 詳しくは後ほど説明するが、AO入試とは、大学や学部ごとに求める人物像であるアドミッションポリシーに基づいて学生を募集する入試のこと。推薦入試は、指定校推薦や付属校の内部推薦による入試だ。

 上図を見てほしい。2000年度時点で国公立大学と私立大学を合わせたAO・推薦入試比率は33.1%。それが18年後の18年度には45.2%と約1.4倍に増えた。私立大学に限ってみれば52.4%とすでに半数を超えている。

 AO・推薦入試がここまでの存在になったのはなぜだろうか。一つは大学が、多様性を求めるようになったことが挙げられる。

 起点となったのは1990年、慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部で導入されたAO入試だ。ほとんど学力不問に近い、特定の秀でた能力を評価するこの試験が始まってから、徐々に採用する大学が増えていった。18年度時点でAO入試を実施している国公立大学は87校、私立大学は482校に上り、16年度には東京大学が推薦入試を導入して話題になった。

 もう一つの理由は大学の経営難だ。なにしろ、92年をピークに日本の18歳人口は減り続け、09年ごろからいったん横ばいで推移してきたが、21年ごろから再び減少局面に突入するとみられている。

 そこで、一般入試よりも早い時期に学生を確保するため入学定員を確保でき、しかも、一部の大学では「名前さえ書けば入れる」とやゆされるAO・推薦入試を積極的に実施しているというわけだ。

 受験生側にもAO・推薦入試に積極的になる事情がある。ランクを下げてでも浪人せずに現役で大学に行けるAO・推薦入試を望む傾向がかなり強まっているのだ。