米国の「不動産の虎」が明かす、ポストコロナの投資シナリオPhoto:NurPhoto/gettyimages

新型コロナウイルスの猛威は、ありとあらゆる資産や商品の価値を一変させつつある。株と原油は大暴落した。金は上がった。では不動産はどうなる? 緊急連載『世界経済ロックダウン』の#8では、世界各国で活発に投資を手掛けてきた北米の不動産投資運用会社、ベントール・グリーンオークのソニー・カルシ社長に危機後のシナリオを聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

モルスタの投資率いた
不動産業界の注目人物

 ベントール・グリーンオークは、欧米の主要都市で高級商業施設や大型物流施設などに積極投資している。日本でも東京・銀座の複合商業施設「ギンザシックス」(オフィスフロア、取引価格約200億円)や、大阪本社ビルなど武田薬品工業の一連の資産(同約500億円)などを取得する大口の買い手だ。カルシ氏は米モルガン・スタンレーの不動産投資部門幹部を経て独立。業界の注目人物として世界的に知られている。

――長年にわたり、グローバルに不動産投資を手掛けてきました。その経験を踏まえると、新型コロナウイルスが不動産市場に与える打撃と、過去の景気後退や経済危機による打撃にはどういった違いがありますか。

ソニー・カルシ米不動産投資ファンド、ベントール・グリーンオークのソニー・カルシ社長

 最大の違いは、今回の危機が「誰一人として免れられない」という点です。これはパンデミック(世界的大流行)であり、危機はどこか特定の国の内側にとどまりません。他の経済危機が特定の国や産業にフォーカスしたものだったのとは大きく異なります。

 前回の金融危機(リーマンショック)は、金融機関が焦点でした。グローバルな不動産市場は実は、そこまで深刻な打撃を受けていませんでした。当時、「ウォールストリート対メインストリート」という表現がよく使われたことを覚えていますよね。前回の危機の影響は主にウォールストリート、金融に表れましたが、今回はあらゆる企業、あらゆる産業、あらゆる人々が影響を受けています。豊かな人も、貧しい人も関係ありません。不動産投資に携わる私にとっては、過去のどの危機よりも深刻な状態だと感じられます。

 そしてこの危機の難しさは、「いつ終わるか分からない」という点です。さまざまな人が展望を示していますが、どの展望も今は希望にすぎません。

 ただそんな中で唯一言えることは、アジアが比較的良くなってきている、ということです。日本は欧米に比べればまだ感染を抑制できています。韓国は封じ込めに大成功したといってよいのでは。新型コロナはアジアから広がりましたが、復活もアジアから始まりそうです。