森岡毅氏が全就活生に送る、「働くこととは、キャリアとは何か?」株式会社 刀 代表取締役 CEO
森岡 毅(もりおか・つよし)
1972年生まれ。神戸大卒。96年、P&G入社。北米ヘアケアのアソシエイトマーケティングディレクター等を経て、2010年経営危機にあったUSJ入社。V字回復の使命完了後、17年「マーケティングで日本を元気に」の大義の下、マーケティング精鋭集団「刀」を設立。 Photo by Hiroki Kondo(REAL)

USJ復活の立役者である戦略家・マーケターの森岡毅氏。著書『苦しかったときの話をしようか』では、一人の父親として、就活する長女と真摯に向き合った。悩める就活生やその親に向けて、働くこと、キャリアとは何かを語ってもらった。(ダイヤモンド・セレクト編集部)

──就職活動を始めた学生の一番の悩みは、自分に何ができるのか、自分は何がやりたいのかが分からないことだと思うんです。どうやってその答えを見つけたらよいのでしょうか。

 物事というのは、やる前からできるかできないかは分かりません。だからといって、片っ端からやってみて試してみる時間もないわけです。つまり、できるかできないかで仕事を選ぶことなんてできない。やりたいかやりたくないかで選ぶしかないんです。

 では、自分がやりたい仕事は何なのか。それを考えることは、働くことの意味を問うことでもあります。働くということは、誰かのためになる、誰かに対して価値を生み出すということ。ですから、自分の価値を生かしやすい領域、すなわち自分の強みが生きる領域にやりたい仕事もあるはずです。だからその方向に向かって最初の一歩を踏み出せばいい。

 就活というと、どの会社に入ればいいのか、どんな仕事に就けばいいのかと考えがちですが、そんなことがすぐに分かるはずがない。なぜなら、自分の強みが分かっていない人が多いから。まずすべきことは、自分の強みは何なのかを自分自身に向けて問うてみることです。

──自分の強みはどうすれば分かりますか。

 それは自分が好きなこと、得意なこと、やってうまくいったことの中に必ずあります。好きなことの中に成功体験があり、成功体験をたどっていくと自分の強みが見えてくる。成功しているということは強みが生きているということだからです。
 
 試しに、自分が好きなことを書き出してみてほしい。腕時計が好きという「名詞」ではなく、「~すること」という「動詞」で考えてみてください。例えば「運動会の騎馬戦で勝つ作戦を考えるのが好きだった」「部活の試合で地区大会を勝ち抜く作戦を考えることが好きだった」という人は「作戦を考えることが好き」だといえるでしょう。20年も生きてきたわけですから、誰でもそんな成功体験を積み重ねてきているはずです。そうやって自分の特徴、強みを認識することが、就活の第一歩だと思います。