米中政治的な対立を脇において、米中の医師と科学者は協力と交流を深めている Photo:REUTERS/AFLO

米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の注目記事の要点を短時間でまとめ読みできてしまう『WSJ3分解説』。今回は、新型コロナウイルス感染症が拡大する前はいがみ合っていたり、ライバルとして火花を散らしたりする関係だった者同士が、未曾有の危機に直面してコラボレーションに動き出しているニュースを取り上げます。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

米中医師と科学者が政治的な対立を
脇において協力・交流を進めている

 新型コロナウイルス感染症の拡大が止まりません。日本時間4月14日午前4時の時点で、感染者数は世界全体で189万7373人、死亡者数は11万8304人に達しました。

 中でも米国は感染者数増加に歯止めがかけられず、感染者数は世界最多の55万8176人を達しました(*)。米ニューヨークなどで都市封鎖(ロックダウン)を断行していますが、終息の兆しははっきりとは見えていません(*数字は米ジョンズ・ホプキンス大学のまとめ)。

 米トランプ政権からは、新型コロナウイルスの感染拡大阻止へ向けた道筋がなかなか見えてこないいら立ちからか、ウイルスの発生源だとみられている中国を名指しで非難したり、その中国に対する初動が遅いとしてWHO(世界保健機関)を責めたりする声が上がっていました。米中間には貿易戦争のときのような不穏な空気が流れ始めていました。

 そんな中で、米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は重苦しい空気を一掃する出来事を報じています。

●「ウォール・ストリート・ジャーナル」より
>>協力惜しまぬ米中の医師、政治的対立よそに

 記事によれば、米中の「何百人もの医師や科学者がオンラインプラットフォームを通じて協力を深めている」というのです。

 そして、ハーバード大学医学部のジョージ・デイリー学部長の次のようなコメントを紹介しています。

「公衆衛生に対する共通の脅威に直面すると、医学と科学が良い方向への推進力となり、政治を超越することは繰り返し証明されている」

 記事では、米国華人医師会の理事であるエリサ・ウー医師の「国家間の緊張は消えないだろう。だが医師の立場からすると、コロナウイルスは世界的問題であり、政治的課題はひとまず忘れるべきだ」というコメントで締めくくっています。

 暗いニュースが多い中で、米中の医師と科学者が手を取り合うという、久しぶりに希望を感じる報道でした。