増税法案成立後に改めて募る危機感
権力欲に右往左往する日本の政治

 政治に関して門外漢の目から見ても、最近のわが国の政治情勢は酷い。民主・自民・公明の三党合意によって、すんなり消費税率引き上げ法案が成立するかと思いきや、予想外のドタバタ劇の末、ようやく法案成立にこぎつけた。

 その間、自・公を除く野党各党が野田内閣に対する不信任案を衆院に提出したり、同じく7会派が参院で首相問責決議案を提出した。自民党も、一時衆院解散の言質を取るまでは三党合意の破棄も辞さずとの姿勢だった。消費税率引き上げが決まった今、混迷国会の課題を「企業」に例えて振り返ってみたい。

 政治は、言ってみれば国を牽引するリーダーの役であるべきだ。国の将来の構想を考え、それに向かって国民を導く役目を果たさなければならないからだ。そうした政治の役目は、企業に例えると経営者、あるいは経営陣ということになる。

 その経営陣が、かくも頼りない様相を呈している。経営陣が権力闘争に明け暮れ、企業の将来のことを真剣に考えない。それでは、企業の収益性や将来の成長性に疑問符が付く。当該企業の株価は低迷を続けることだろう。

 ところが、政治には株価に相当する指標がない。仮に経営陣がこれほど酷いと、当該企業の収益が低下し、それに伴い株価も下落する可能性が高い。そうなると、株主からのガバナンスを受け、経営陣は罷免されることになるはずだが、政治の場合には、次の選挙まで審判が先送りされる。それまで、主権者である国民はダメな政治家を辞めさせる術を持たないのである。

 最近、企業経営者と話をすると、彼らがわが国の政治にあまり期待を持っていないことがわかる。「期待しても無駄だ」という諦めが鮮明化している。企業であれば、「経営陣が頼りないので、現場が強くなる」という発想だ。現在の政治情勢を見ると、それは賢明な選択肢だろう。

 わが国の政治を見ていると、いかにも権力の座を求めて右往左往しているだけのように見える。そこには、国民にとって何が重要かという視点が欠けている。民主党から離れて新党を結成した小沢氏に関しても、言っていることは「国民の生活が第一」なのだが、どうもそのロジックには説得力がない。