信託銀行が顧客接点になる

深刻な構造不況に直面する銀行業界。特に地方銀行の経営はにわかに厳しさを増している。銀行経営に詳しい高橋秀行・共立株式会社取締役会長が、全4回にわたり今後の地銀経営のあるべき姿を展望する本連載。最終回となる第4回では、今後の地銀の事業改革の基軸となる事業性評価とテクノロジーの活用について説明する。

事業性評価とITテクノロジーの活用が
地銀のビジネスモデル変革の基軸になる

 これまでの3回で、地方銀行のビジネスモデルを変革するために、「リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)」を活用する上でのポイントを説明してきました。最後に、「リスクアペタイト・ステートメント(RAS)」に反映する具体的な事業戦略における優先課題は何かについて説明します。

 これからの地方銀行のビジネスモデルにおいて、基軸になると思われる事業戦略についてはいろいろな整理があると思います。その中でも「事業生評価」と「ITテクノロジーの本格的利用」は基軸に据えるべき事業戦略であり、RASにおいて経営トップとしての取り組みスタンスを明確にすべきだと思います。

 本稿では、事業性評価のポイントとして「信託機能の重要性」と「マーチャントバンキング業務の強化」の2点、ITテクノロジーの本格的利用については「デジタルバンクの設立」について説明していきます。

 地方銀行において対顧客向けビジネスをコア事業として強化するには、事業性評価を事業戦略の中核に据えることが不可欠です。そして事業性評価が機能するには、以下の四つの機能を持つことが必要ではないかと考えます。