アビガン写真提供:富士フイルム

新型コロナウイルスの治療薬候補として大注目を集める、富士フイルム富山化学(富士フイルムホールディングス傘下)の「アビガン」。政府は買い上げて200万人分を備蓄する方針を示し、企業による臨床試験(治験)も最終段階だ。それでも現状では、製薬業界で大ヒット製品を指す「ブロックバスター」への道のりは険しそうだ。特集『日本企業、緊急事態宣言』の#20では、その理由を解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

富士フイルムHDが買収した
旧富山化学工業が開花間近

 銀塩フィルムの終焉で2000年代以降、ヘルスケア領域に大きくかじを切った富士フイルムホールディングス(HD)。傘下の富士フイルム富山化学(旧富山化学工業)が手掛ける新型コロナウイルス治療薬候補「アビガン」は同社を代表するクスリになるかもしれないが、業績へのインパクトは限定的といえそうだ。

 富士フイルムHDが中堅製薬会社の富山化学工業を買収して医療用医薬品事業に本格参入したのは、08年のことだ。当時すでに富山化学工業はアビガンをインフルエンザ治療薬として開発中で、14年に国内で製造販売承認を取得した。ただしアビガンが薬価収載(医療用医薬品の公定価格リストに載ること)されることはなく、その後、新型インフルエンザ対策の政府備蓄薬として買い上げられた。

 市場には流通しない、有事の際にしか使われない不思議なクスリ――。

 そんなアビガンの評価がコロナショックで変わろうとしている。作用機序(効くメカニズム)からして、インフルエンザだけではなく、新型コロナでも体内でのウイルス増殖を抑える効果が期待できるからだ。